2007年02月14日

# 164 *ease [明治神宮前]


*ease
by *LIFE* Delicious Food SERVICE


 *easeに行くことは長らくの懸案だった。それが駒沢大学「FELLOWS」の黒川マスターから「あそこのオーナーとは友達なんで、ゼヒ!」と言われ、外苑前「GORO'S☆DINER」のパティシェ"タカちゃん"からも「こないだ行って来ました。ゼヒ!」と言われ、さらにケーキ日記の"halfaperson"氏は、私がグズグズしている間に「ボクは、あのコに会いに行く…」と2度も行ってしまった。いろんな縁が私を京セラビルへと向かわせる――。

●あくまで"カフェ"である


 階段を降りてすぐ左手。ガラス扉を押すと、奥のキッチンまで柱も仕切りもない大きなワンフロア。見上げれば「コノ高さがこのビルの一体どこに隠されてるんだろ?」というくらい高い天井。コンクリ打ち放しのフロアの上に塩ビの黒いソファとイームズのサイドシェルが20余席。都会的な、無機質な面持ちの中にあって、一灯だけ吊るされたシャンデリアがミョウになまめかしい。奇しくもこの夜はプロの"本物の取材"が入っていたので、そっと見守らせていただきました――の図が、右の写真。

 白いブロック壁に無音声でプロジェクターが映し出すは『タイタニック』? ……と思ったら『ラブ・アクチュアリー』。ロバート・パーマー? ……と思ったらビリー・マック、ネックレス? ……と思ったらジョニ・ミッチェルみたいな――。ラジオでオンエアはエアロスミスの『アルマゲドン』。

●動の空間

 いかに天井が高くとも地下は地下、窓外の味の名店街には木製のブラインドを下ろして、四つの壁で浮世から隔てた、とっときの異空間を現出している……なんて書けば、エラク塞ぎ込んだ場所を想像するだろうが、不思議なことにこのカフェには、くつろいだ空気の中にも「動き」がある。さらに言えば客・スタッフ分け隔てなく、偶然居合わせた者同士であたかもコノひとつ空間を共有しているかのような、そんな不思議な一体感があるのだ。

 本来個々に静まり返るべきこの空気が、何者かによって音も無くかき混ぜられている。本来個々に閉ざされるべきこの空間が、何者かによってひとつに束ねられている――その「何者か」とは!? (なんて、そんなにキバる場面でもないですヨ)。いえ、フツーにワンちゃんこのカフェのスタッフ犬、フレンチブルドッグのおもち(♀3歳)とコロ助(♂10ヵ月)がその「何者か」。

●スタッフ犬、おもちとコロ助の冒険

 この夜、おもちは中央のソファでひっくり返っていて、もっぱらコロ助クンの独擅場。お客さんの間を行ったり来たり、居なくなったかと思えばまた現れて、机の下から円らな瞳で何を問うているのか、いないのか……コロ助、キミは一体何が欲しいのかえ?



コロ助

 でも不思議。コノ「お客さんの間グルグル」を繰り返すうち、何だか自分のトコばかり多く回って来ているような錯覚に陥るワケですよ。で、頭撫でつつもミョウに周りに気兼ねしてみたりして……でも内心すごく嬉しかったり。

 つまりはおもちとコロ助、2匹のスタッフ犬の存在が、コノ空間に居合わせる人たちすべてのハートを結び繋ぐ共通の関心事となり得ているワケでして、自然スタッフとの間に会話も生まれましょう、知らぬ客同士、目も合いましょう、笑顔もこぼれましょう、やがて恋も芽生えま……って、そこまでは?? (おもち&コロ助のお休みは水曜です、一応)


●アップタウンダイナー

 このカフェが「動の空間」である理由のもうひとつは、フードメニューの圧倒的な数の多さにある。パスタにピッツァ、ステーキにごはんもの、それに加えてバーガー18品、サンド12品、ドック5品――カフェというよりほとんどダイナーキッチンからはジュウジュウと絶えず調理の音が聞こえてきて、実に活気がある。

 オーナーシェフ車田(くるまた)氏にバーガーのルーツを訊けば、なんと! かつて名古屋は栄にあった今や"幻"の名店アップタウンダイナー(当時の所在地: → 奇跡! 地図にはまだ残ってたんだヨ!)で働いていた――しかもこのとき一緒に働いていたのが代々木公園「ARMS」の岩田マスターというからWの驚き!! (←悲劇じゃないヨ)

 今から8年前、当時名古屋で大人気だったアメリカンダイナーで共に働き、夢を語り合った若者2人が、やがて東京でそれぞれの店を構える……なんかすっごい青春ドラマじゃありません? これだけで一本書けそうな気がしてきた(同じコを好きになる設定にするか……)。しかも両店は原宿と代々木というご近所同士。

●幻の自家製バンズ

 '02年6月、24歳で*easeをオープン。長い店名は、一見するとバックにどこか大きな資本でも付いているようにも思えるが、左に非ず。曰く、敢えて「旨いもの屋」と名乗ることで自らにプレッシャーをかけているとのこと――有言実行!

 パスタなどイタリアン系のメニューでスタートし、ハンバーガーが登場したのはオープンから1年半後(この時間差がハンバーガーの難しさを物語っていると思う)。しかもデビューに際して半年がかりで自らバンズを焼いてみて(※普通そこまでしません)、ついにはコレぞ! という自家製『白神こだま酵母バンズ』を作り上げてしまった。今はそのレシピをそっくりそのままパン屋に渡して、そのとおりに作らせているというから、やはり只者ではない。

●次は必ずやビールで

 18品あろうとも、いつでも始めはチーズバーガー¥1,050。自家製バンズはマスター自ら語るとおり「ファイヤーハウス」の、つまり当時の峰屋のバンズをベースにしており、光沢ある表面に白ゴマ、ふっかりと緩やかなドームを描き、峰屋の実物よりさらにリッチ系の甘味を前面に押し出した、まさしく峰屋の系統を彷彿とさせる一品。「甘味はご馳走」と例えた峰屋ご主人の発想が、こんな形で受け継がれているのは興味深い。

 さらに特筆すべきは、餅のようにしっとりとした生地の弾力。ちょっと力を入れて摘んでも破れることがない――いつまでも触っていたい感触である。

 裏にマスタード+マヨネーズ、チェダーチーズ、パティ、刻んだレリッシュとオニオンがトマトの上に乗り、レタス、下バン。総じてファイヤーハウス的なバーガーなのだが、マスタードの酸味を抑えて立ち過ぎないようにしている点と、野菜やバンズの柔らかな印象とは対照的に、パティがしっかりとした硬めの味で全体を下支えしている点が特長的。特にパティは噛むほどに肉の旨味がじっくりと滲み出して来て安定感がある。マスタードとマヨネーズを和えて巧く中和させているので、次に目立つのはスイートレリッシュの甘味天然酵母バンズにレリッシュが相乗して、余韻さわやかな甘味香るバーガーに。付け合せはナチュラルカットのフレンチフライに塩胡椒ガッツリ(心得てるネ!)。この夜は背信のアイスティー¥500だったけれど、次は必ずやビールで!

§ §

 メニューのイラストもロゴデザインもみんなオーナー作。行く行くはTシャツや犬グッズのショップも始めたいというが、どれも当りそうな予感。20代のヴァイタリティが疾走する安らぎの空間

 600℃の薪窯の味を再現したナポリピッツァの話や(コレ美味!)、スイーツの話(はコチラに譲ります)、そして*easeとファイヤーハウスを掛け持ちするスタッフ守口君の話など、書けばホントにキリがないので、一旦ココで切ります! 続きはまた場をあらためて――。



↑おもち


※オープンから6年と8ヶ月、2009年2月28日をもって閉店となりました。*ease の魂は「THE GREAT BURGER」に引き継がれ、そしてその先にまた新たなる計画が――きっとあるでしょう。車田さんの挑戦はまだまだこれから! (2009.2.28追記)

# 本日2月28日、*ease [明治神宮前] が閉店します
# *ease/THE GREAT BURGER [明治神宮前] のアニバーサリーパーティー
# バンズ― THE GREAT BURGER/*ease [明治神宮前] ◆ vol.4-4
# バンズ― THE GREAT BURGER/*ease [明治神宮前] ◆ vol.4-3
# バンズ― THE GREAT BURGER/*ease [明治神宮前] ◆ vol.4-2
# バンズ― THE GREAT BURGER/*ease [明治神宮前] ◆ vol.4-1
# *ease [明治神宮前] のモッツァレラパプリカバーガー

― shop data ―
所在地: 東京都渋谷区神宮前6-27-8 京セラ原宿ビルB1
     東京メトロ千代田線 明治神宮前駅歩5分 地図
TEL: 03-3499-7622
URL: http://www.ease-ldfs.com/
オープン: 2002年6月6日
営業時間: 11:30〜23:00(22:30LO)
ランチ: 11:30〜15:00
定休日: 無休(要確認)

2007.2.14 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 12:22 | TrackBack(0) | 東京編◆西部 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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