RODEIO grill express
上州名物、かかあ天下と何とやら……とはよく聞くが、一歩外に出るとまぁ〜寒い寒い! 南国ブラジルから来た彼らはこの寒さに耐えられるのだろうかと心配すると、「それが案外平気らしい」と長谷川さん。
ブラジリアンプラザを後にして、西小泉の駅の反対側へとクルマで移動。風景は典型的な日本の田舎のソレで、大きな農家と畑の間を抜けること3、4分。やがて前方に大きな倉庫が現れた。降り立てば、ふたたびブラジルの薫り――。
●SUPER MERCADO TAKARA
この倉庫がSUPER MERCADO TAKARA。"MERCADO"とはポルトガル語で「市場」の意。つまり"SUPER MERCADO"は「スーパーマーケット」ということで、「スーパーマーケット タカラ」というのが店名の意味である。"SUPER"は元はラテン語だが、使い方は英語圏のものだろうから、"TAKARA"という日本語とあわせて3つの言語が掛け合わさった、三元豚的ネーミングと言えようか。
ブラジルタウンに比較的初期からある店で、ブラジリアンプラザが観光案内所的に、半ば外に向けて開かれた場であるとするなら、こちらは完全なる内輪・地元向けの日々の買い物をする場――といった棲み分けになろうか。キタンジーニャ同様、ブラジルの食料品・日用品を扱うが、中でも食料品が強い。倉庫ゆえ売り場が広く、品数豊富で、一部においてはキタンジーニャを上回る品揃えも。たとえばアチラで頻繁に食されるカリオキーニャ(カリオカ)豆など、ざっと5、6種類の商品が並んでいて、壮観。
●ハンバーガーはどれくらいポピュラーか
さて、私と長谷川さんの間にはいまだ解明しない「謎」がある。ブラジルにおいてハンバーガーはどれくらいポピュラーな食べ物か――という、ごく基本的な話なのだが、しかしどんな"ブラジル通"でも、さすがにハンバーガーはノーマークではないかと思うのだ。ブラジルまで行って、なんでまたハンバーガー? ブラジルらしい食べ物なら他にいくらもあるでしょ――というのが率直な反応だろう。
しかし今回ミョウに興味を惹いたのは、こうしてどこのランショネッチ(軽食堂)でも一様にハンバーガーを扱っているという点なのである――率直に変じゃないですか? 家庭でも作るのか――という疑問もあるが、コチラは売り場を歩くうち、其処彼処に物的証拠を見つけることができた。
タカラには冷凍のビーフパティが数種置いてあり、さらに明らかにバーガー用の形をしたバンズがなんと3種類も並んでいる――3種類ですよ!! そんな品揃え、日本のスーパーではついぞお目にかかったことがない。
バンズの写真奥の「ゴマバンズ」は敷島製パン。手前の2種類は、日本国内でブラジル人向けの食品を製造するメーカーが数社あり、そこのモノ。パティも同じで、パッケージは一面の葡語だが、国産。他にもレトルト食品、サウガジーニョと総称される揚げ物類、リングイッサやモルタデーラなどと呼ばれるソーセージ類、パン、菓子類、チーズなどの冷蔵品と、ブラジル人向け食料品の多くは日本国内で製造されている(しかもウチの近くにもあるんだよネ)。地球の真裏から運んでくる距離・時間その他のことを思えば、消費地にヨリ近い場所で製造する方が、はるかに効率的で安心・安全であることは言うまでもない。コノ売り場の状況を見る限り、少なくとも大泉のブラジル人は、家でハンバーガーないしはソレに近い食べ物を作って食べているのにほぼ間違いなかろう――と、まずそこまでは判った。
●RODEIO grill express
食品売り場を後にしてランショネッチ(軽食堂)へ。このランショネッチのコーナー、過去何度か店が代わっており、今のRODEIO grill expressになってから食事色が強まったというが、バーガーは健在。メニューは葡語オンリー、日本語なし。でもレジの店員は日本語ベッラベーラなので、心配なし。
中古家具屋で掻き集めたようなバラバラのダイニングテーブル多数、その周りをファミリーでワイワイと囲んで食べる感じ。なにしろ基本が"倉庫"なので、屋根高く、床はコンクリ打ち放しで室温低め。しかし石油ストーブがいくつも配され、店員も寒くないかと気を遣ってくれるので、こちらも心配なし。BGMはアチラの人気グループのライヴ映像。
●X-TUDO "TERREMOTO"
ハンバーガーは具材を増やしながらX-TUDOへと至る例の体系で6、7種。ココの店はX-TUDO ¥500の上にさらにX-TUDO TERREMOTO(テヘモト)¥700なるバーガーがある。
”TERREMOTO”とは「地震」という意味。何が入っているのかと訊けば、指折りながら、え〜、パティ2枚にステーキ……と、要は「地獄ラーメン」とか、そんな類の殺人的メニューらしく、コレを目にした瞬間、長谷川さんの心の内にもそれなりの"激震"が走ったという。君子危うきに近寄らず、「地震」は回避して、またもX-TUDO。お供はガラナ――いつになくおいしく感じたのは雰囲気のせいか。
白ゴマの乗ったバンズに、酸味の少ないマヨネーズ、やはり塩薄めで穏やかな旨みのベーコン、よく伸びるモッツァレラチーズ、卵は両面焼き、パティは「PASTEL & CIA.」のものより丸みを帯び、プリッとしていて塩味、リーフレタス、ふたたびマヨネーズ、トマト、下バンズ。やはりバンズはおいしくない(後述)。「PASTEL」と同様、水分少な目、ケチャップなどかけると水分補給の上でもバランスがとれてよい。内容をあらためて見返すと実に豪華なバーガーだが、味にそこまでの華やかさはなく、やはり薄めの味付けで、全体に淡白。
この日は肉や豆などを使ったブラジル料理の数々がなんと1,000円で食べ放題! (年末年始限定? 詳細不明)8、9種の料理を盛ったビュッフェが中ほどに設置されていて、ほとんどの客がそちらに行っている。ハンバーガーよりコノ食べ放題に興味が向くのは人情というもの、私の心も正直そちらに……。
●ブラジルのパンは
どうも小麦の風味に欠ける――と、日本人の私には思える。
世界地図を広げて小麦の産地を見ると、北米ならアメリカ中北部(冬小麦・春小麦というアレ)にカナダ、南米ならアルゼンチン。ブラジルは気候的に小麦の栽培には向かないという、そんなことも関係するのだろうか。しかも今回私が口にしたパンは、ブラジル人向けに日本国内で作られているパンなので、つまり風味にやや欠けるコノ味は、本国の味を忠実に再現したものと見てよいだろう。でもこれでなかなかブラジルではパンの需要は高いのである。
こうして食べ比べてみれば、いかに日本のパンが風味豊かでおいしいものであるかということが再確認できる……ん? だったら日本だって小麦の産地とは言えないんじゃない? ゴモットモ……。
― shop data ―
所在地: 群馬県邑楽郡大泉町坂田4-18-1
東武鉄道小泉線 西小泉駅歩15分 地図
TEL: 0276-62-2600
営業時間: 9:00〜20:00
定休日: 火曜日(要確認)
2007.1.20 Y.M
これからトリプルネーミングはそう訳すのが正しい日本語ですね。
私も昨年TAKARAの食堂を訪れたのですが、言葉が解らないので入り口で断念しちゃいました。
次回、再トライしてみます!
ブラジルではミニフランスパンが好まれているとか。私がブラジリアンプラザ1Fで食べたソーセージサンドもそうでした。
パサパサしたのが好きなんでしょうね。
遅くなりました。コメントありがとうございます!
三元豚、
念のため、誤解のないよう「SUPER」はラテン語であることを書き加えておきました。
フランスパン、
そうです、一度食べてみようと思ってます。味は想像つくのですが、でもコノ辺りの食べ物がブラジルの味の"基本"のような気がしているので。
サンパウロとか南部のパダリア(パン屋)のパンはめちゃくちゃ美味しいです。
パウミジャーノっていう、パルメザンチーズを使ったパンがとにかく美味しいです。
エスフィーハっていう中身に具が詰まったパンも美味しいですよ。
でもスーパーで買うパンはちょっとぱさぱさしてますね。給食のこっぺパンみたいな感じ?
イタリア移民が多いので、南部は小麦系のものが美味しいです。ピザも美味しいですよ。
ただ、パスタ(マカハン)はアルデンテとは程遠いでろでろです
ああ、ブラジル料理食べたいな
フェジョンとビナグレッチとファリーニャかけて魚のフライと混ぜて食べたいです
コメントありがとうございました。そしてお返事遅くなりごめんなさい。
そうですか。ただ問題は、私が日本国内で出会ったブラジル人向けのパンがことごとく後者、つまり「スーパーで買うパン」の方だったということですね。アレらから「ブラジルほんとはパン美味しい」と推測をするのは実に難しい……
日本からのブラジル移住はサンパウロなど南部が主だったようですから、その南部の美味しい系譜を何ゆえ引き継がなかったのか……という気もいたします。
先日、名古屋の大須のブラジル料理の店がお休みで、行きそびれました。
またよろしくお願いいたします。