2006年09月24日

# 150 ラッキーピエロ [函館]



 2年越し――'04年5月、駅前店での「25分待ち」が旅程に響き、泣く泣く諦めたラッピことラッキーピエロに今度こそあり付かん!と、2年を経たこの8月、再び"訪函"。




●ラッピとGLAY


 函館の人でラッピとGLAYのことを悪く言う人はまず居ないだろうというくらい、地元に深く愛された店である。溶け込んだ――いや滲み込んだと言う方が合っている気もする。


 GLAYが紹介したことがきっかけで一気に(全国的に)ブレイクしたという話を聞いたことがあるが、どうやらそういう言い方も大袈裟ではなさそうで、それどころか資料をいろいろと見るにつけ、むしろラッピとGLAYは切っても切れない間柄のようにさえ思えてくるのである。中でもJIRO氏は生涯無料のパスポートを持っているとか……(て言うか、もはや顔パスでしょ)。函館市内ばかりに11店舗。地方・一都市限定でこれだけの規模のハンバーガーチェーンというのは今日、日本国内に他に例が無い。




●プレスリーが青春だった


 もちろん全11店('08年現在13店)周ったわけではないのだが(「全店制覇ラリー」なるものもある)、どの店もそれぞれ異なるテーマ、デザイン、メニューを掲げ、店作りをしている。


 例えば十字街銀座店は「ハンバーガー&カレーレストラン」――コレはごく典型的なパターン。五稜郭公園前店は「ハンバーガー・カレー&スパゲッティ」人見店「ハンバーガー・カレー&ラーメン 餃子」上磯店に至っては「ハンバーガー・カレーとんかつオムライススパゲッティ」とまぁ一見すると、最近のFKの様な「何屋だかよく分からん状態」に陥っているようにも思えるのだけど、しかしハンバーガーという軸がブレていないので、どこもしっかりと「顔」の見える作りを保っている。


 サブタイトル――美原店「僕らは皆んな映画青年だった」港北大前店「プレスリーが青春だった」松陰店「アンリ・ルソーの熱帯楽園」で、今回訪ねたベイエリア本店は「森の中のメリーゴーランド」……あぁ、書いてるうちに覚えソ。さらに小見出しが……函館駅前店「連続うまさの感動」本町店「すべてはお客様のうまいのために」港北大前店「うまいものしか売りたくないのです」。極め付けの一店は大谷高校内店。文字通り私立高校(実はJIRO氏の出身校)の「校内の食堂として稼動中」の店で、生徒・教職員限定というプレミア店。中央大学のトムボーイもびっくり!


 とまぁこんな調子でイイ意味でやりたい放題、好きに暴れ回っている感じなのだけど、しかしそれにまた函館の人たちが着いて来ているからこそ、その「やりたい放題」も成立するワケで、それだけ人を惹きつける強い「魅力」と巻き込む「勢い」と、そして何より人を唸らせる「美味しさ」とを併せ持っている――ということになるのだと思う。




●奉仕活動


 ラッキーピエロは、店舗周辺はじめ海岸・公園などの清掃活動、ユニセフへの募金活動、小中高生の総合学習応援、被災地避難所での救済活動(カレーライスの炊き出し)などの社会奉仕・社会貢献を積極的におこなっている。


 もちろん日本を代表する大企業だってこれに相当する、ないしはこれら以上の大規模な社会貢献をやっている筈ではあるが、ただ規模が大きくなればなるほど、我々消費者との間に距離ができ、何かそれが遠いところでやっていることかのように思えて、今ひとつ実感が湧かない(つまりノレない)――というマイナスがどうしても生まれてしまう。


 その点ラッピは営業展開を函館市内に限っているため、ダイレクトにその様子が窺えて、活動の結果が身近に返ってくることが実感できる。そうした手応えはまた「次」の活動へと繋がってゆくだろうし、何よりこうした社会活動への興味と関心を芽生えさせることにもなる。地域に根差したこうした活動は、個々人の力だけでは難しい面も多く、また大企業では今ひとつ顔が見えにくい。ちょうどラッピぐらいの規模がそれをやるのに適した大きさと言えるのかも知れない。


 王代表がラッピのエリア拡大、市外・道外への出店を望まぬ理由は、そんなところにもあるように思われる。目指すは拡大でなく充実。思い描く充実を実現できるサイズというものがまず意識の上に置かれていて、そこから手の届く大きさ・顔の見える大きさを決め出しているのだろう。

 まるで提灯記事のようになってしまっているが、大袈裟に書いているつもりもない。ラッピには(良い意味で)人を巻き込む勢いというものがあって、お客さんを、函館市民を、函館を、良い方向・良い方向へと引っ張ってゆく引力を放っているような感じは……確かにちょっとだけしましたネ。

 まぁ、高々バーガー2個食べたくらいで解かることではないのだけれど、しかし私も高々2日の訪問ですっかりその勢いに呑まれてしまった1人なので……(良い意味で)。


 前置きはいい加減このくらいにして、そろそろ2年越しの念願を遂げた話を……






●ラッピとハセスト


 ベイエリア本店には夜9時前に着いた。金森倉庫、西波止場などの観光スポットに隣接して在り、向かって左隣はやきとり弁当で有名なハセストことハセガワストア、右手並びには名店カリフォルニア・ベイビー


 食い気盛んな向きにはラッピとハセストをハシゴしてテイクアウトするのが一種定番コースらしく、またひと昔前、"僕らがまだ少年だった頃"、函館で夜遅くまで開いている店と言えばラッピぐらいしかなく(日〜金0時30分、土曜は1時30分まで)、なので若者たちは夜な夜なこの本店前にクルマで乗りつけてはバーガーを頼み、『アメグラ』よろしく店員がクルマまで持って来てくれるのをカーラジオ聴きながら頬張った……なんて青春の思い出を持つ人も少なくないようで、ちょうどピープル加古川店のようなふるさとの記憶の一片を形成する思い出深い店の一つが、函館では此処ラッピということになるのである。




●森の中のメリーゴーランド


 夏休み中というのはあるだろうが、この時間にして持ち帰りのお客さんが引っ切りなし、絶える間のない盛況ぶりである。レジ前の待ち席は常に人で埋まっている。


 翌朝行ったときはもっと凄かった。注文待ちの客が店の外にまで溢れ返らん状態。一歩中に入ると店内の雰囲気に一種独特の勢いがあって、思わず気を呑まれる感じである。注文を整理し、ミスなく捌(さば)いてゆくという基本処理作業だけでも実は相当に大変なことだろう。よほど手馴れていないとコノ処理は難しい。


 賑やかなのは人だけではない。デザイン密度の濃いメニューが店内其処彼処にびっしり。中には周富徳氏考案のメニューとか、岸朝子さんが「美味しゅうございました」とか、元祖でぶやが「まいう〜!」とか、驚きだったのは「紀宮様(サーヤ)に召し上がっていただきました」という額入り写真。テレビやメディアとの連携・絡みも豊富で、名物ぶりが窺える。


 前述のとおり本店は「森の中のメリーゴーランド」なので、鏡の壁の前の6席は空中ブランコ……ではないが、電飾を巡らせた天井の梁から鎖で吊るされたブランコ席になっていて、その向こうに赤い木馬、店内外は壁から椅子までフォレストグリーンに統一されている。BGMは50's。エディ・コクラン「サマータイム・ブルース」がウェルカムソングだった。




●"母"の安心


 メニューは人気No.1チャイニーズチキンバーガー\315、No.2くじら味噌カツバーガー\380、No.3酢豚バーガー\350、No.4トンカツバーガー\380、函館名産の朝イカで作るイカ踊りバーガー\315(季節限定)、土方歳三ホタテバーガー、1日20個限定THEフトッチョバーガー\780等19種(きっと各店取扱いが違う筈)。


 人気上位はすべてパティ以外の具材を挟んだ非バーガー……と言うか、本来のバーガーの方が少数なので、いかに地雷を踏まずにパティに辿り着くかと、しばし注文口でメニューとにらめっこしていた。この夜はラッキーチーズバーガー\390と軽くジンジャーエール\150で。レジ後ろのサーバー脇に大きなグラスと紙コップが刺さっているのを見て「アレは何サイズですか?」と訊いたら「飲み物は大小なく一種類、すべてあのサイズです」と答えが返ってきて、これにもびっくり。


 スタッフは平均年齢高め、要はおばちゃんが多いのだが(各位失礼)、実はコレがポイントで、作り手がおばちゃんだと妙な説得力があり、「この人の作るものなら間違いないだろ」という安心感が生まれる。つまり学食のおばちゃんであり、駅そばのおばちゃんなワケである。


 家に帰ればお母さんなのだから、そりゃこの安心感も当然だろうし、それにこれだけ多岐にわたるメニュー、主婦歴豊富なお母さまでないと到底太刀打ちできないだろう。


 そんな「安心」「安定」「経験」に着目して積極的に中高年層を採用しているそうで、確かに線の細い学生バイトなどより、キビキビとはるかに動きが良いし、パワフルだし、ときに気配りに満ちている。ラッピのアノ独特の勢いの源は、実はこのおばちゃんパワーであるかも知れない(各位重ねて失礼)。


 払いを済ませると番号を告げられると同時に名前を訊かれる。出来ると番号を呼び上げながら席まで持って来てくれるのだが、手渡す際には名前で呼ばれる――二重の確認の意味かと思ったら親愛の情であるらしい。客室乗務員から思いがけずも名前で呼び掛けられたときと同じで、確かに悪い気はしない。




●キアヌ入りバンズ


 いよいよ初ラッピ。プラスチックのカゴに入り、包みは二重。南米原産キヌアという栄養バランスに優れた穀物入りバンズの上には白ゴマいっぱい、下バンにまで回り込んでいる。カリカリする薄皮の食感が実に美味しく、またラッピ名物の様々な具材に対する応用も効きそうだ。


 以下順番に自信はないが、トマト、アッツアツのハヤシ系ソース、たまねぎの刻まれたタルタル風ソース、チーズ、パティ、マスタード、下バン。


 パティは合挽きだが「一度も冷凍していない厳選されたフレッシュミートを手でこね」た感じは伝わる。が、それ以前に、ご覧の通りのアツアツ・ドロドロのメルティングポットであるため、何が何だかよく分からない。濃ゆ〜いソースがマヨと出会い、ずっしり重厚な食べ応え。常にアツアツ。手も口の周りもソースでベトベトの満腹感。コレは2個目は無理と、この夜はこのまま退散。


 翌日は結局ラッピが朝食になったのかな?非バーガーながら、コレを食べねばもぐりとばかり、人気No.1チャイニーズチキンバーガー\315を。バンズの間に甘辛く味付けた大ぶりの鶏の唐揚げと、折り畳んだレタスの上からマヨネーズ。レタスの畳みは立派。はっきりとした味で主張明快、ボリューム以上の食べ応えで、非バーガー云々などどーでもよくなる美味しさ。ラッピのバーガーには食べる者を巻き込む勢いがある。


 300〜400円のバーガーにして、このしっかりと腹に来るパワーはなかなか得難い。一種佐世保にも通じる家庭的底力。何よりバンズの選択が素晴らしい。一番感動した点は、今思えば実はそこかも知れない。




●港から港へ


 王社長は神戸生まれの華僑三世。神戸から函館へ……偶然かアメリカンスピリッツのマスターも函館から横浜へと港から港への移動をみせた。港は文字通り玄関である。シルクロードグループという中華料理店から派生し'87年にオープン。と言うことは来年で早20年です。


 中華料理屋がどうしてハンバーガーを始めたのか、どうしてピエロなのか――その辺りの疑問は未解明なままなので、いずれ社長に直接お聞きできればと思っている。そんな機会に恵まれれば、また文章を書き足すことだろう……えっ?もう十分長い?






― shop data ―
所在地: 北海道函館市末広町23-18
      函館市電 末広町電停歩3分 地図
TEL: 0138-26-2099
URL: http://www.luckypierrot.jp/
オープン: 1987年6月
営業時間: 10:00〜24:30
定休日: 年中無休(要確認)


2006.9.24 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 12:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 東国編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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