2006年08月20日

# 145 EBISU BURGER [兵庫・甲子園]



 8月6日――夏の全国高校野球大会の開幕日。阪神電車甲子園駅に降りると予想通りの人出である。第3試合、大会きっての好カード(てか、いきなり当るとは……もうちょっと大会的盛り上がりというものを考慮に入れられぬモンかね)横浜−大阪桐蔭戦が、夕闇迫る甲子園球場で熱く繰り広げられているのを尻目に、そのお隣、かつて甲子園パークだった敷地跡にできたららぽーと甲子園へと足を向けた。

 ららぽーと甲子園――2階建ての建物が船橋同様、延々ヨコに長く延び、専門店街の果ての果てにヨーカドー。これくらい長いと何か乗り物が欲しくなる。確かに長大ではあったが、造りはイマドキの手軽い感じ。曲がりくねった建物の中ほどに在るフードコートガーテンパーティーの中にエビスバーガー。

 このフードコートもまた広大で、丸テーブルを赤と白の籐椅子で囲む姿はよく言えばリゾートホテルのロビー的趣き。窓が大きくとってあり、明るく開放的な感じが心地好さそうなのだが、しかし所詮はフードコートであることを忘れてはならない。BGMはダンスにブラック。でこの夏場、18時からはフードコートがビアホールに早変わり!ビアホール甲子園と称し……と言っても、別にビール各社が何かを競うワケではない。この場合、純粋に地名を表しているだけであり、そう考えると「甲子園」という言葉には、いつしか「競い合う」という意味が込められるようになったのだと、大会初日にしてそんなことを思ったものだ。

 さてエビスバーガー。2004年11月オープン。「「グルメ・バーガーの品質をファースト・フードに」をモットーに、日本初の「グルメ・ファースト・バーガー」を皆様に提供していきたい」がコンセプト。これは……要は1店舗きりのお店が手間隙かけてコストかけて作り上げることなら出来るが、それを全国チェーンの規模に遍く落とし込もうとすると、商品イメージより大きくレベルダウン&スケールダウンしたものしか出来ず、うまく行かないという、大手が試みて悉く失敗している極めて難しい線に挑もう――ということである。

 大手の場合、ソースなどは工場で作ったものをそのまま使うので化学調味料的ニオイが抜けず、どう足掻いても作り込まれた感じの貧弱なスケールを脱け出せない。とみに最近私は外食の際、この「パッケージ感」とも呼ぶべきものがすごく気になっていて、如何に店構えがオシャレで居心地の好い店に入ろうとも、二次加工的なものが出て来るとヒドク損した気にさせられるのである。

 まぁしかしそれも大手ゆえと割り切ろう。エビスバーガーはまだ1店だけだから、将来の展開を見据えつつも割りと制約なく、好きにメニューを考えられる自由が残されている。ちなみにエベッさんがやろうとしているのは「グルメバーガーの低価格化」であり、その点上に挙げた「ファストフードの背伸び」の例とは決定的に違うのだが、しかし食べる側からすれば下が上を見ようが上が下を見ようが、どっちにせよ同じことなので、ま、同じと。

 黒地に金文字でEB……エディバウアーじゃないよ。店舗からメニューのデザインからプロフェッショナルがきっちり考えてデザインした風で、その気になればいつでも2店目3店目と展開させてゆけそうな、整った感じがある。現在最もチェーン展開に近そうなバーガーショップだ。そもそも「エビスバーガー」という名前自体、美味しそうな響きを持っている。トレードカラーは悉く。黒い帽子に白いシャツというユニフォーム姿も締まって見える。バーガー類10種、殆どが300円台。そのうち牛肉のパティを使っているのは僅か3種。注文するとフードコートの定番、ブザーが渡される。

 エビスバーガー\390、お供にアイスカフェラテ\290。バンズは上も下も白ゴマだらけ。エリックス似……と思ったら、あちらはケシの実。裏コゲ目。中はマヨ、レタ、トマ、チー、パティ、ケチャ、下バン。パティはゆるめ、そして甘辛い。いや、全体に調味料の甘辛さばかりが先に立って、トマト、チーズ、レタスの味が活きてこない。これだけ味が強いと人の好みも如実に別れるだろう。ファストフードというからにはある程度普遍的な味付けが要求されると思うのだが、今のままだと個性や好みを完全に越えてしまっている。

 ゴッドの社長も言う通り、美味しいバーガーは味付け云々よりまず素材の善し悪しで決まる。低価格に抑えた時点で自然その辺も「それなり」になるワケで、では素材の良さで勝負できないとなれば、次は味付け勝負。あらゆる食材の味を全てぶっ飛ばしてしまうくらい強烈な味を付けてしまえば、注意はそっちに向いて個々の素材の弱さは紛れる。カレーが良い例。

 しかし近年ブームのグルメバーガー(という言葉は私は嫌いなのだが)は、ひとつひとつ優れた質の食材を、しかもバランスよく組み上げて初めて成立する――といったものであって、決して強引なソース使いで片を付けてしまうような乱暴な食べ物ではない。なのでソース一発で「グルメ」とは名乗り難いだろう。ないしはパティならパティと、どこか一点に集中する勝負の仕方か……。

 何にせよお店のカラー同様、もう少しシャープに狙いを絞り込んで行った方が良い気はする。あと、メニューの写真と実際の具材の乗せ方の順番が明らかに違っているというのもどうかと……。

§ §

 ところでエビスバーガーの名前、日本のえびす信仰発祥の地、西宮に1号店がオープンしたことから付けられている……とサイトにはあるのだけれど、経営者である有限会社ウィンウィンアソシエイツは本社所在地東京都渋谷区恵比寿……むしろそっち?他にも恵比寿に「オープニングカフェ」、汐留に「ジャパニーズベントー」を直営しており、実は東京――なお店なのでありました。

2006.8.20 Y.M

エビス・バーガー ハンバーガー / 鳴尾駅甲子園駅
夜総合点★★★★ 4.0
昼総合点★★★★ 4.0


posted by ハンバーガーストリート at 10:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 西国編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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