2006年08月12日

# 141 RACCOS BURGER [岡山]



●備前岡山

 67万都市、岡山。城下町の町割りが今も効いていて、街は整然として明るい。特に市電が走る桃太郎大通りは、まさしく桃から生まれた桃太郎の桃が如く、空に向かってパッカと大きく開けていて爽快だ。

 古い建物が多い。こんな古いビルまさか使ってないよね……という建物の2階の窓にぽっと明かりが灯っていて、階段の上り口にダイニングバーのメニューが出ていたりする。ところが昭和30〜40年代の建物を今なお使ったこうしたお店は、時代がちょうどひと巡りしてイマ見るとちょっとオシャレに映るのである。

 しかも最近の安っぽい造りの建築が街にさほど混ざり込んでいないので、建物それぞれの趣きを周囲のそうした無粋な建築によって邪魔されることなく、じっくりと味わうことができる。街としてはこれくらいがちょうど落ち着きがあってよいサイズなのではないだろうか。

 さらに不思議なことに、岡山には街の大きさのわりにカフェやバーが多い。格式や楽しみ方の異なる様々なバーが2時、3時までパラパラと開いているので、夜が更けても街はどこか明るく賑わっている。






●Idol Punch

 パンク/ハードコアバンド、Idol Punchのヴォーカリスト、Racco氏の店。ラッコ氏のバーガーショップだからラコスバーガー

 氏もハンバーガーには目がなくて、首都圏でライヴをするたびアレやコレやと食べるのが何よりの楽しみ。今まで何処行かれました?と訊いたら、レギュラーで出演する「ハコ」の所在地の関係から、横須賀のハニービー、三軒茶屋のベイカーバウンス、そしてクア・アイナなどの名が挙げられた。

 自身運転するクルマで早朝アチラに着くので、他のメンバーが熟睡しているのを良いことに、お目当てのバーガーショップに乗り付けて、起き抜けの朝食がハンバーガーと。で、ステージの準備……およそこんな手口らしい。まぁハンドルを委ねてしまっている以上、文句は言えぬ状況ではある。

 でそうこうするうち「岡山でも東京のようなハンバーガー食べられたらなぁ」と思うようになり、「なら自分で店始めちゃおうか」と思い募り、で本当に始めちゃったと。思い立ったが吉日の行動力には只々拍手!


●先駆

 岡山市民67万を前に敢えて言うが、氏によれば「岡山は食べ物は3年遅れている」。それが証拠に、岡山に初めてフレッシュネスバーガーがオープンしたのはラコスバーガーよりも後のことなのである。

 ラコスバーガーのオープンは'05年10月。それまで岡山にはファストフード以外の、カフェないしはダイナーなお店で食べるハンバーガーというものは存在しなかった……と言い切ってしまうのは危険なので断言はしないが、ともかく「非ファストフードなハンバーガー」というものを感覚として持ち合わせていないというのが昨年10月、ラコスバーガースタート時点の状況である。


●配慮

 その辺りの「認識のズレ」に対する配慮がメニューから見てとれる。


 ハンバーガーはすべて500円――500円上限説に見事当てはまっているのだが、いきなり700円、800円するバーガーを見せて引かれてしまっても……とRacco氏はまずそれを恐れた。

 入り口で「高すぎる」と決め付けられては、味の良し悪しに触れてもらうことすら適わないわけで、とにかく敷居を低くしてバーガーとの出会いのきっかけをなるべく広く持ってもらおうという、そんなアプローチから値段とサイズを抑えたわけである。

 しかし内容は充実している。アボカドの入ったラコスバーガーからレンコンの唐揚げの入ったフジヤマバーガーまでバーガー類9種。単なるトッピングの足し算でなくスパム、チリチーズ、シュリンプサラダ……と全て方向の違うバーガーを9つ並べ、実にバラエティに富んだメニューになっている。


●オイシイ要素

 ラコスバーガー\500。見せたいものが全て見えてるこの見た目!上バンの角度が絶妙。バンズは表面ツヤなしの白ゴマ、裏もオモテも軽く焼いてある。中はアボカド、マヨ、トマ、シュレッドオニ、チー、ケチャ、パティ、グリーンリーフ、で下バン。HEINZ のケチャップを中心とした構成。

 レタスはクア・アイナの影響か、ギザギザのグリーンリーフを使っているが、これが珍しく奏功しており、ジョリジョリとしたアクセントが機能している。パティは安定した存在感で、これだけの野菜陣がひしめく中、それらを巧く引き立てる役回り。白いチーズはモッツァレラか、これまた野菜との相性が良い。

 アボカドの入ったバーガーは久々だったが、独特のまろみが巧く効いており、バンズの甘味がさらに全体をまろやかにまとめ上げて、後を引く良い味だった。500円にしてオイシイ要素がすべて揃った実に実に贅沢なバーガー。何より半端ない愛情と熱意の感じられる一品で、先に挙げた首都圏各店と比べても決して引けを取らない。毎朝切断する北海道産メークインのポテトと手作りピクルスのセットで\750。日替わりのスープが\350――とにかく安い!BGM――ジャズヴォーカルが気持ちいいナ……と思ったらUAだった。


●磨屋町

 場所は西川にかかる野殿橋という橋を渡り、磨屋町(とぎやちょう)。この辺りは「軽く飲む界隈」という。

 駐車場の角にあった倉庫"のような"物件を改装。店内木造、柱と天井をペールグリーンに塗り(この辺フレッシュネス的。ないしはベイカーバウンス的)、壁は白。窓は滑り出し窓。カフェを飛び越して洋服屋さんなテイストで、こげ茶のカウンター周りに至っては食料品がどっさり並び、グローサリーな雰囲気。

 純米国風インテリアかと思ったら、一番奥の窓には例のレトロな型板ガラスが違和感無く使われていて、訊けばココだけ「元からあった窓」だという。オモテの黒とミントの縞柄がナイスなオーニング(日よけテント)が、左右対称な外観を強調していてこれまた見事。流石ミュージシャン!お店然りバーガー然り、とにかく見せ方が巧い。




●黄金の方程式

 ラッコさんが始めたラコスバーガー。しかし如何にバーガーを出す店とは言え、店名は「ラコスカフェ」でも「ラコスダイナー」でも良かったワケである。むしろその方が的が広く、商売的には確実だろう。都内各店を見渡してみても「バーガー」と付く店は実は皆無に近い。それをまた何でラコスバーガー?と訊けば、返ってきた答えは「やっぱハンバーガーでしょ!」……コレだ!主張鮮明、趣旨明快!

 氏とは「ハンバーガーにはビール!」という点でも意見が一致。

 この黄金の方程式を一度覚えてしまうと相当クセになるのだが、しかし岡山の人たちはそうした楽しみ方を未だ知らないワケである。なので氏は今後、ハンバーガーの楽しみ方や醍醐味を日々広め、伝えながらお店を営業するという、そうした段階を暫し地道に続けてゆくことになるだろう。そんな次第なので私からも是非一言……岡山市民67万人に告ぐ――ハンバーガーにビールは最高っ!


― shop data ―
所在地: 岡山県岡山市磨屋町5-19
      JR岡山駅歩10分 地図
TEL: 086-221-5351
URL: http://raccosburger.com/top.html
オープン: 2005年10月
営業時間: 10:00〜24:00
定休日: 不定休(要確認)

2006.8.12 Y.M

ラコスバーガー ハンバーガー / 柳川駅郵便局前駅西川緑道公園駅
夜総合点★★★★ 4.0

posted by ハンバーガーストリート at 13:48| Comment(0) | TrackBack(2) | 西国編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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