2006年05月02日

# 126 BIG MAMOU [池尻大橋]



 この辺りに昼間来るのは初めてだ。誰かの運転するクルマの助手席から眺めることが大概で、一度だけ何かの勢いで渋谷から夜に流れ歩いてきたことがあったが、そのときの印象はとにかく暗く影の差したコンクリート、コンクリート……。国道246号と山手通りが交差し、その上をさらに首都高3号線が渡って行くココ大橋は、コレぞまさしく交通の要衝。何より要衝であるための機能のみを最大限に優先させたような場所で、もちろん人もたくさん住んではいるが、とてもじゃなし住宅街のくつろいだ空気など微塵も伝わってはこない。と言うか、幹線道のパワーに気圧されているような恰好だろうか。山手通り沿いもコンクリートの立方体が表情無く建ち並ぶ風で、妙に四角い印象を受ける。さてコノ要衝にさらにさらに、首都高速道路株式会社は大橋ジャンクション(仮称)を追加建設中!騒音に排気ガスにマンションの資産価値等々……近隣住民たちの胸中や如何ばかり……



 そんなことでどうにも一抹の寂しさを感じる場所なので、せめて耳元だけでも賑やかにとジョージ・ハリスンを聴きながら目黒川沿いを歩く(『33 1/3』)。そう言えばこの辺、かつてのポリドールの本社を始めレコーディングスタジオなどが点々と多いのだ。山手通りに出たら中目黒方面に方向を変えてさらに前進。店は田園都市線の池尻大橋と東横線の中目黒の中ほどに位置するのだが、最寄の菅刈小学校バス停付近から中目方面を見ても駅と判るものははっきりとは見えず、片や大橋の立体交差は菅刈陸橋の延長線上にやはりババーンと架かって、慎むところを知らない。例によって一本入った所に引っ込んで在る店で、すぐ先にはモダンなパティシェリーがあり、すぐ近くにはブランジェリーありイタリアンありバーもあったりで、中目黒からの流れなのか、所謂隠れ家が思わぬ所に潜む、なかなかに予測不能な土地柄。



 見るからに天井の低いマンション1Fに縮こまるようにして在る。年季の入った感じの石材の床にペールグリーンに塗られたガラス戸、扇形に模様の付いたフランス壁、棚に並ぶワインボトル。これで鍋やフライパンが吊り下がっていたらビストロと呼ぶ方がふさわしい店内。でも出て来るのはバーガーにサンドイッチ。入ってすぐのフロアはこじんまりと10席。フロアの真横、少し照明を落として暗がりになった一隅にキッチン、その奥にさらにフロアが続く。この変則的な部屋の形からすると中庭でもあるのだろうか。メニューはサンドとバーガーが半々。ラタトウイユバーガー(ミスタイプではないよ)、アスパラチーズバーガー、ゴルゴンゾーラバーガー、グリエールバーガー(そう、アノ帝国の感動再びッ!?)など、おとなしそう……でも美味しそうな面々。



 チーズバーガー\850、バンズはややブカっと大き目、ツヤなしの表面に白ゴマ。外にピク、トマ、白い生オニ、タルタルソーにレタ。で、チー、パティ、下バン(例によってバターが塗られていたか)。少し底の窪んだ皿に収まっているせいだろうが、垂直方向よりも水平方向に大きい見た目。加えて言うなら何処となく皆頼りな気な印象……。キッチンの暗がりに【おすすめの味付け】を記した黒板が立て掛けてあり、半ばソレに従いつ、されどケチャップ・マスタードは使わずに口にすれば、まずはバンズのやわらか〜な、やわらか〜な感触。持つとそのままヘナヘナとしおれてしまいそうな、なしのつぶて……違った、"頼りの無さ"も覚えるのだが、頼りの無いのが良い証拠、気泡大き目、されどホテル風なスポンジ質のガチガチしたものとは異なる、ふんわりとクッションのような弾力に富んだ逸品だ(多分カリカリ焼いてないからでしょうな)。次にパティのややぷりっとした食感に行き当たる。このぷりっに加えギュッと締まった感触も併せ持つパティは、下味程度にササッと塩コショウを振っただけの味付け。何も付けずにコゲの香ばしさを噛み締めたい。

 さてココにレタスの上に乗ったタルタルソースの味が加わる……今までタルタルのひしゃげた味も、マックのマヨネーズ味のパティも好きではなくて、タルタルと聞くだけで敬遠気味だったのだが……う〜む、なるほど!コノ店のタルタルソースをいただいて初めてその役割が解ったような気がした。このソース、黒板にあるとおり肉・野菜・パンの味を一体化するつなぎの役を見事にこなす、要のソースなのだ。こう使うものなのかぁと初めて得心がいった。このタルタルを中心とする肉・野菜・バンズの絶妙なる融合の中、ピクルスの塩味がまたイイ〜ところで効いてくるんですワ〜!美味しいオニオンは後口残らず!付け合せはフレンチフライにパセリ。



 レタスも気合入れてキッチリキッチリ折り畳みました!って感じでなくて、敢えてエアを入れたかのように、どこかふわりとしている。バーガー全体としてもギッチリ・ピッチリしていずに余裕のある作り。このヘヴィでもライトでもない、絶妙な量感?というものは初めてな気がする。例えばヘヴィと言えばOUTBACKとかT.G.I. FRIDAY'Sとか、あるいはLOG KITとか。一方ライトと言えば、そうね……ハンバーガーインとかBOOGIE CAFEとか。そのどちらでもない中間の軽さがココ。多分にバンズのクッションが働いているんでしょう――これがまた実にふんわりとしてるんですな。BGMはなんだかどうしてクラブ系で、どうせならもうちょっと明るいジプシー音楽とかアコーディオンとか流したらソレっぽいのに……とか。since 1898...えっ?1998?


※2007年4月20日閉店。う〜ん……これも痛い!他では味わえない、100キロ台の超スローカーブ的、独特のバーガーでしたから(2007.7.7)


2006.5.2 Y.M

posted by ハンバーガーストリート at 12:29| Comment(2) | TrackBack(0) | 東京編◆西部 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ここも移転したんだか、廃業してしまったのか、現在は営業してないようです。
Posted by ごし丸 at 2007年06月22日 13:39
ごし丸 様

コメントありがとうございます。お返事遅れて申し訳ありません。

そうなんですよ。こちらも聞いておりました。元がイタリアンのシェフをされていた方とお聴きしていますので(ご本人から直接にではありませんけれど)、また再びそちら系のレストランをなさる……ようです。確かな情報ではありませんが。


次の土日でも使って、そろそろ各店の状況を更新しようかと思っています……が、難作業ですね。


またよろしくお願いいたします。
Posted by ハンバーガーストリート at 2007年06月29日 12:24
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