2006年04月15日

# 122 CATOOYA [国分寺]



 よく雨の降る夜だった。冷たい湿気を帯びた息苦しい空気の中、JR中央線を国分寺駅で降りて北口に出た。徒歩2分という地図に従い飲食店街の一角に吸い込まれてみると、そこはパブにスナック、さらには黒いロングコートに身を包んだ所謂ポン引き諸兄が道を固める小歓楽街だったのである。意思に反してこんな通りに入り込んでしまったことにまず戸惑い、かつ駅歩2分の店がまるで見つからない状況に焦りを覚えながら、しかし気付けば早くもこの界隈をざっとひと回りしてしまったところだった。成果ナシ……降り止まぬ雨を避けるため、とりあえず目印にしていたコンビニの軒下に駆け込んで、夜の街をあらためて見渡してみると、粗方の店がとうにシャッターを降ろしている――これでは仮に店が見つかったとしても、きっとやっていないだろう……と半ば心の中で帰り支度を始めながら、それでももう一度地図を出して見てみると、現在地のすぐ傍に一本の筋があって、その中ほどに店の所在地を示すマークがされているのである。はて、こんな道さっきあったかな……気付かなかったことを不思議に思いつつ、これがラストチャンスとその暗い路に分け入ってみると……あたっー!ステンレス製の扉の向こうからおめでたいディスコビートが聴こえてきたときには内心ホッとしたものだ。明るく健康的なお店のイメージからは到底想像できない、飲み屋街に奥まる細路地裏のマンション1階。



 入ると奥にバーカウンター、手前はイマドキのカフェラウンジ風にダイニングテーブルとソファがくつろいで配置されている……これだけ長いことコノ企画をやっていながら、いまだにひと目見て「このインテリアは○○風」と言えないのが情けないが、しかしシンプルで機能的なこのモダンな家具のテイストは、見る人が見れば北欧の誰々の流れを汲んでいるとか、○○の何年ごろの作品を意識しているとかどうとか、きっと面白い話が止め処なく出てきて興味の尽きぬこととは思うのであるが、しかし今回はページの都合上、それらについて触れるだけの余裕がないのが誠に残念である。



 1バーガー1枚、大きなクリップで止められたカード式のバーガーメニューが手渡される。このメニューのイラストもなかなかだ……嗚呼!アフロヘアのこの上なくよく似合うこのイラストのタッチ――コレを見て私にコレのオリジナルはどこの誰と、即座に答えられるだけの知識があったなら……!!きっと然るべき人を連れて来て語らせれば、この画風を生み出したイラストレーターにまつわるエピソードやデザイン史的位置付けなどについて淀みなく説いて聞かせて、大いに盛り上がるだろうことは疑いないのだが、先を急ぐため、残念ながらそれらはまた別の機会に譲らざるを得ない。



 ベーコンチーズバーガーレギュラーサイズ\980、お相手にハウスワインの赤を。バンズはやわらかいホワイトと固いグラハムからホワイトを選択。キィニョンさんが作る、ややドライでライトな扁平バンズは表面白ゴマ、裏にバター。以下ピク×3、グリーンリーフ、熟れたトマ、生オニ、ベー、チー、パティ、下バン。野菜は最初は外に。よく焼けた皮がシャリシャリと砕けるバンズは、実にしっかりとした立派な骨格を有していて、これならどんなに重たい具材を積んでも簡単には壊れそうにない抜群の安定感。このバンズのシャリと甘味がリードする中、生オニオンもシャリシャリとした感触を歯に伝え、フルーティな甘さのピクルスがよく効いている。パン粉・玉ねぎを混ぜたパティ――これはモスの匠味を凌ぐなめらかさである。相当にキメ細かい。そしていつまでも温かい。そして確かに塩味。中ではベーコンが地味な存在だった。細やかなパティの食感が印象的なバーガー。BGM――サンプリング多用のクラブ系がときに悩ましく、ときに物憂く。



 このバーガーの最たる特徴である、がっしりと安定感のあるバンズを提供するキィニョンさんは、'02年に南口にオープンして以来、地元の熱烈な支持を得る名パン店である。そのアーティスティックな店構えといい、険しくも華々しきパン職人人生を歩むシェフが生み出す傑作パンの数々といい、取り上げればそれこそ町のパン屋の一大繁盛記として、読み応えのあるストーリーが描けることは火を見るよりも明らかなのだが、しかしそれはこの企画とはまた別のコンテンツとして上げるべき記事であって、割愛しなければならないのは甚だ残念である。ちなみに今回繰り返し登場するコノくだりは、国分寺への移動中に読んでいた筒井康隆の『富豪刑事』に繰り返し現われる意味の無い「断り」を真似たもので、読んでいてあまりにも無意味だったものだから、つい私にまで伝染ってしまった次第。>筒井センセイ、解毒剤を下さい!


2006.4.15 Y.M

posted by ハンバーガーストリート at 10:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 帝都編◆都西 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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