引き続き埼玉より。中浦和という駅で降りる――
JRで「浦和」と付く駅はなんと7駅。「浦和」「東浦和」「西浦和」「南浦和」「北浦和」「中浦和」「武蔵浦和」……わかんないヨッ! ある種の悪意をすら感じるこのネーミング、こんなことになるのはよほど浦和という名の土地が広範囲に亘っていたか、よほどその市域の中で地区・地域が細分されていなかったためか、あるいはよほど浦和の名を世に知らしめたかったか……そんなことしか思いつかない。東京近郊の鉄道路線図を見渡しても、同じ地名がこれほどまでに多用されている例は、この浦和をおいて他に無い。しかも――これだけ路線図上で幅を利かせておきながら「浦和」という市は最早存在しないのである……
中浦和という駅で降りる。普通、駅を降りるとロータリーがあり商店街があって、それらを総称して「駅前」と呼んだりするのだけれど、コノ駅は、高架駅から地上に降りるとすぐ住宅街ののんびり静かな空気が迫ってきて――ファミレス、ボウリング場など数店が在るにも関わらずである――駅前と住宅地との"境"を極端に感じない駅だった。駅前が開発されていないとも、あるいは住宅地のド真ん中に駅が造られた――とも言えるか。
3分も歩けば別所沼公園。そのすぐ向かいに在るお店――という話なのだが、公園と店との間には二車線道路が走っており、しかも案外と交通量が多いものだから、公園と地続きという印象でもない。一切の枝を刈り落とされて、まるで鉛筆のように直立するメタセコイアの木が、今にも降りだしそうな灰褐色の空をバックに無機質な風景を造り出している。
背後に12階建のマンションを従えた古い4階建ビルの1F。メタセコイア同様、かつては殺風景であったろう店の入口には、カーポートの上にまさか自作……? かも知れない立派なウッドデッキが造られて、公園を眺めながらお茶のできるテラス席になっている。店内入るとまずカウンター。床はオレンジ色の焼きタイル"風"リノリウム。壁の木材をフォレストグリーンに塗り、店名が如くエコでナチュラルなイメージが広がる。BGMもアルファ波誘発系、サントラティックなオーケストラ。
チーズバーガー¥260(安っ!)。ちょっとしたバスケットの中に傾いて登場。実にちょっとしたバーガーである。可愛らしいという形容が相応しいサイズと丸み。表面何もないツヤツヤバンズ、裏マスタード、マヨネーズ、ドミ系ソース、レタス、チーズ、パティ、下バン。裏がサックリ焼かれたバンズは見た目にも想像できる甘い味。ドミ系と言うかハッシュドビーフみたいなソースとマヨネーズの味がそこに乗り、全体にも甘めの構成。中でもソースの支配率が高い。パティは繊維質ぎっしりでしっかりした噛み応え。
きのこバーガー¥300はソースにサウザンドレッシング、レタス、刻みオニオン、パティ、胡椒がはっきり効いたしめじ、下バン。やはりソースのハヤシな味を中心にした、甘めバーガー。いずれも、その中でかっちりとまとまった印象を受ける。小ぶりながらもこの値段――バーガー9品はすべて¥320までに収まる。多分こどもからお年寄りまで、幅広くたくさんの人たちに気軽に食べてもらいたい――そんな思いから抑えた価格設定にすることを考えたのだろう。そしてその設定の中で作れるサイズはコレだった――というまず価格ありきで、後から決まったサイズであるように思われる。2つくらい平気でいけてしまう、手軽なちょっとしたおやつ感覚のバーガー……そう、値段といい雰囲気といい、世田谷の「ERIC'S HAMBURGER SHOP」を思い出す。
ハンバーガーショップを志す人の中には、例えば「OATMAN DINER」のマスターのように本場アメリカの豪快なバーガーに惹かれて始める人と、ファストフードな業態に……と言うとチェーン展開を想像するので、この場合「形態」と呼ぶのが適当か? ――とにかくファストフード店のスタイルに強く憧れて自分でもやってみたいと思う人と、大別して2種類いるのかも知れない。コノ店は後者に当てはまる。
まずレジで注文し、代金を払ってから席に着く。バーガーは店員が席まで運んでくれるが、帰りは客がセルフで下げる――。こんな小さなお店ながら、ファストフード店同様なゴミ箱(フタがスイング式の。しかも木製)があり、バーガーの包み紙には「チーズバーガー」「きのこバーガー」とひとつひとつラベルが貼ってある。そんなディテールまでもきっちりスタイルを踏んでいる辺り、この店は「海賊島ハンバーガー」以上にファストフードである。男子2名、厨房の奥に静かに控えている辺りは、やはりエリックスと像が重なる。と言うコトで当企画ではあえて埼玉版エリックスと呼びたい。公園を散策した後のちょっとした足休めの場にふさわしい、埼玉のエリックス。
2006.4.10 Y.M
安くておいしいと思いました。
まじめなお店はあるものです。
そうですね、こちらのお店などは公園を散歩して周った人たちのために「開け放たれている」―という感じで、何か"幅広さ"とか"分け隔ての無さ"といったものを意識されているようにも思えます。
同じく「公園となり」立地でゆきますと、
・# 136 AS CLASSICS DINER [駒沢大学]
・# 137 ARMS [代々木公園]
なんてパッと浮かびますが、どこも少しずつ"色が違う"のが面白いところです。
またよろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。
「JRで「浦和」と付く駅は」
……なぁんてツッコミ、ちょっとキツかったですか?
そんな次第でまたよろしくお願いいたします。