佐久まで行って来た。東京から長野新幹線で1時間――という行き方はせず、小淵沢から小海線を使い、八ヶ岳南麓の高原を抜けて佐久を目指した。
●菱屋本店
この店に惹かれたのは、経営する菱屋本店の沿革の面白さによる。江戸中期・宝暦年間に始めた宿屋がその起りで、それが土産物屋、食堂など様々に派生しながら二百数十年後の平成十七年にはハンバーガーショップを始めたというのだから、ご先祖様もびっくり……ではなく、江戸時代の宿屋と現代のハンバーガーとが同じベクトル上に扱われていることに商いのチカラと言うか、何か不変の逞しさのようなものを感じたのである。日本広しと言えどこんな店もさすがにあるまい。にしてもである――なぜ長野県の小諸市にオリジナルなハンバーガーショップが突如現われたのか? そしてなぜこの内陸にあって海賊島なのか??
●ステーキレストラン 菱屋海賊船
菱屋本店の経営する菱屋海賊船というステーキレストランで出しているハンバーグが好評で、それを更にアレンジさせ……というのが海賊島の始まり。ではなぜステーキ屋が海賊なのか。
ハンバーグステーキの名はドイツの都市ハンブルクでこの肉料理が盛んだったところに由来する――コレ定説。次に料理の起源だが、北アジアの遊牧民タタール人の肉料理であったとする説がよく知られている(異説もアリ)。その北アジアの料理が如何にしてヨーロッパまで伝わったか――諸説あるが、13世紀、タタール人が欧州に攻め込んだ際(バトゥの征西?)もたらしたとするものと、大航海時代に船乗りがハンブルク港に持ち帰ったというものと、二説をよく目にする。マクドナルドのHPでは後者を採り上げている。よってここでも後者で進める。
北アジアの騎馬民族が考え出し、大航海時代の船乗りが運んだ――海のモノと山のモノとのコラボレーションによってコノ肉料理はハンブルクステーキと呼ばれるようになったのである。でまぁ、運んできた船の中には良い船もいればきっと悪い船もいたでしょ……ってことで、ココにハンバーグ伝来海賊媒介説が誕生する次第――歴史浪漫ですな。タタール人のタルタルステーキは生肉のタタキで(Mr.ビーンにも登場する)、ドイツのハンブルクステーキも同じく生で食べる。そのルーツを受けて菱屋海賊船のハンバーグも強く火を通さないレアな焼き加減が信条。テーブルまで運んだ後、高温の鉄板の上で二つに切って中を焼くのは「ハングリータイガー」式。
●トレーラーハウス
その海賊船から生れ出た海賊島ハンバーガーはトレーラーハウスが店舗。インテリア/エクステリアの費用も含めオートローンが組める上、固定資産にならず、動力が付いていないので自動車税も係らないという¥スグレモノ¥。店内外ともさほど極端には"海賊風"の造り込みはしておらず、かえってそれがライトな感覚で良い匙加減。海賊船をイメージした丸窓からは雪を戴く浅間山が見える。キッチンのお母さんも頭に赤いバンダナ巻いて少しだけパイレーツルック。BGMはスローなジャズヴォーカルやオールディーズがまったりと。
●軽井沢の高原野菜
海賊島チーズバーガーMサイズ¥430、Lは¥720。バンズてっぺんにピクルスふたかけが海賊の剣で留まっている。以下レタ、生のキュウリ、マヨネーズドレッシング、シュレッドレッドオニオン、トマト×2、チーズ、干瓢ソテードオニオン、パティ、レタス1枚、下バン。バンズは表面平たい白ゴマ、マックなどに近いお馴染みのもの。裏が軽く焼いてある。
とにかく野菜のボリュームが凄まじい。高原野菜を惜しみなくふんだんに挟み込んだ実に実に贅沢なバーガーだ。ランチセットのサラダに匹敵する量を使いながら、僅かにこの値段! 東京なら800円は固いだろう。レタスの歯応え、トマトのみずみずしさ――これでもMである。和牛100%、二度挽きと一度挽きを2:1で配合したパティは海賊船のポリシーを受け継ぎ、薄身ながらも中に赤みの残るふんわり柔らかな焼き加減。静かに、しかし確かに柔らかな旨味が伝わる。ただ勢力図としては野菜陣の力が圧倒的なので、パティはその影に隠れてやや分が悪いか。もっと肉厚で肉気に満ちたものである方がステーキ屋の看板にとってより相応しいようにも思えるが、とは言え野菜のボリュームと美味しさだけでも、もう十ニ分に驚きのバーガーである。少し物足りなく思う人にはパティをダブルにしたバーガ・バーガ¥580がある。むしろソッチの方が野菜とのバランスは良いかも知れない。
●海賊島アップルバーガー
長野県の特産を使った変り種が海賊島アップルバーガーM¥430。パイナップルの代わりにりんごを使った恰好。パイナップルはシロップ漬けをグリルしたものが多いが、このバーガーのりんごは煮込んでペースト状にしてある。なにしろ他に例のないバーガーなので――と思ったが、「FIRE HOUSE」にアップルバーガー、「AS CLASSICS DINER」にベイクドアップルバーガーがありました。失礼……(2006.11.23追記)
人により感じ方も違うだろうし、故にこのりんごの調理法についてはきっとアイデアが百出して止まぬことと思う。例えば煮込むにせよ形の残る程度に留めておくとか、パイン同様蜜漬けにしたものを乗せるとか、サラダ感覚でシャクシャクした食感を楽しむとか……。焼きりんご(参考:スマトラカレー共栄堂)なんて食べ方もある……が、それでは冬季に限定されてしまうのかな? とにかく工夫次第でもっと発展進化しそうなポテンシャルを秘めたバーガーだった。ぜひぜひ長野の誇るバーガーと言われるまでに大成させていただきたく――
●FC募集中
ただハンバーガーに真摯に取り組む店――というのでなく、そこに海賊という軽い遊び心が加わって、ちょっとアミューズメントに昇華されている辺りがミソ。名前も覚えやすいし、インパクト抜群! 自慢のトレーラーハウスを駆ってFC展開も視野に入れているとのこと。近い将来、必ずや軽井沢に店を出すことになるだろう。こりゃヒットするゾー!! しかし軽井沢で大当たりなんかした日にゃあ、それこそ佐世保張りの分業制でも布かない限り、とてもじゃないが回せまい……さぁ〜大変だっ!!
※後日サイトをよく読むに、FCについて実に素晴らしい考えを持って臨んでおられることを知った。「現代は"個人個人がそれぞれ固有の価値観を持っている"という時代になってきました。母体の大きなチェーンが市場を支配する時代ではないのです……」なるほど。ハンで押したような画一的な店舗が町々に量産されてゆく、従来のFCのスタイルとは違うワケですな? 俄然興味が増してきた……(2006.4.11)
→ # 海賊島ハンバーガー [長野・佐久平] のバーガ・バーガ
【最新情報】 海賊島ハンバーガー [長野・佐久平]社長が
スタイルハウジングEXPO 2007に出展
【最新情報】 海賊島ハンバーガー [長野・佐久平] 社長が出展した
スタイルハウジングEXPO 2007のレポート
― shop data ―
所在地: 長野県小諸市御影新田2746-1
JR長野新幹線・小海線 佐久平駅より小諸方面へ2km 地図
TEL: 0267-22-8019
URL: http://members.ctknet.ne.jp/hishiya/
オープン: 2005年1月
営業時間: 11:00頃〜20:30(平日は15:00〜17:00closed)
定休日: 月曜日(祝日の場合は翌日休。要確認)