かつてバンドホテル(BUND HOTEL)のあった少し先。バンドホテルについては……こちらが詳しいかな? 私も70年代のバンドホテルの姿というのは朧気ながら覚えている。とは言え5歳や6歳の童には、何やら黒々した巨塊が聳えている――といった程度のイメージがせいぜいで、今日あらためて資料を当たってみるに、一度でいいから入ってみたかった……と思うことしきりなのだが、今となっては後の祭り。
ナイトクラブなどというものがあった時代と言うのは、世の中全体がエラク背伸びしていたか、あるいはそもそも世の中全体がいまと比較にならないくらい早熟だったか――多分後者だろう。自我の確立が年々遅れ、アダルトチルドレン化が深刻と叫ばれて久しい平成日本の御世である。私如きがShell Room に行ったところで「ホラホラ! こどもの来るところじゃないよ!」と追い返されるが関の山。平和で豊かで安定した今の時代からは、裕次郎のようなオトナな大スターが生まれることも最早無いだろう。ホテルの跡地に建ったドン・キホーテは、まるで"今"この時代を象徴するかの様な、チ○ドレンな存在に映る。
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住所は新山下。80年代でも随分寂しかった街外れ/港外れだが、それが今や通りは一大マンション街へと変貌している。しかしそうなった今でも一抹の寂寥はなお拭い切れず、埠頭の無表情なダークグレーの印象が視界から消え去ることはない。大型マンションが成すコンクリ壁の間をしばし走ると、道はやがて小港の交差点に出る。「SEAMEN'S CLUB」と「MOON cafe」はすぐそこだ。
大モトはSHAKEDOWN STREETというカリフォルニアスタイルの古着&Tシャツ屋なのだが、大モトSHAKEDOWN...はDaffy'sの店内に在る。「カリフォルニアスタイルの古着……」というテイストは、「TROUBADOUR」を経営するMOTHER LUCYと相通ずるか。
'02年オープン。初めはMOONGOOSEという名のアメリカンバーだったのが、最近ハンバーガーショップにリニューアルしたそう。なかなかに造り込まれた店内。床から壁から扉から天井からぜ〜んぶ木製。狭いながらもイメージを形に出来ている印象。入り口にサボテン(この場合シャボテンと呼ぶべきか)、随所にカリフォルニアが散りばめられている。トイレなんざぁ「ゼスト」真っ青の凝り様で、トイレットペーパーのホルダーなんてホントにこんなのアンの? と考証を疑いたくなる器具が取り付けられており(ま、創作なんでしょうけど)、カギに至ってはどうやって閉めたらよいのかよく解からない半端無い作り。
6人掛けの大きなウッドテーブルの両サイドに同じく大きなベンチ。あまりに店にピッタリはまっているから多分特注だろう。店内2箇所にカラフルな服が架かる一隅があるのだが(この場合"一隅"とは言えぬネ)、SHAKEDOWN STREETは11時から18時までが営業時間、Daffy'sは15時から翌1時までで、SHAKEDOWN...とDaffy'sの関係はこの店内においてはどうも主客転倒して……ン? 違うのか。Daffy'sの営業時間に合わせて服は全部片付けてるのか(不明)。
チーズバーガー¥900、ドーム型バンズは表面ケシ・ゴマなし、ツヤのあるタテの弾力。裏バター、生オニオン×2、ピクルス×2、トマト、白いチーズ、パティ、レタス、下バンズ。パティは薄味で微かにナツメグの香り。トマトも薄味。全体に穏やかな作りの中、バンズの弾力に富む食感がひと際印象に残るあっさりしたバーガー。付け合せはフレンチフライ。
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BGM――ボブ・ディランの90年代のライヴ盤からライ・クーダー『紫の峡谷』へと。ターンテーブルがあり、カウンターにはLP盤が並ぶ。店内其処彼処にチーチ&チョンのポスター、写真が飾られている。よほど好きでないとコレは有り得ない。例によって私は未見だが(店内無音で映画流れてたけど)、ちょいと興味を覚えてしまった。観てみますかな。こんな寒〜い冬には有り難い、木の温もりにホッと心安らぐお店。
2006.2.5 Y.M