お店にしてみればアルバート・ハモンドばりの青い空をバックに撮ってくれた方がホントは嬉しいんでしょうけど、でも、きっとカリフォルニアにだってママス&パパスみたいなグレーの空もあるでしょ……ってことで on such a winter's day ――.
私はかつてこの辺りに住んでいた……って話は軽く流す。その頃に比べれば景色は間違いなく一変したし、まーよくもここまで人が増えたモンだという驚きや感慨もあるにはあるのだけれど、しかしこれでも当初計画の何十%くらいの進捗なのかな? まだまだ空地が目立つ。港北ニュータウン計画はハナから何十年という単位で遅れ遅れで……というのは、当時私がまだ小学生だった頃から聞かされていた話である。
駅から続く店の並びが一応終わって、ココから先は住宅街に入ります……って"分かれ目"交差点の一角に、6店ほどテナントが横並ぶ平屋建てがある。多分わりと短い工期と簡単な工事で建つであろう経済的建築。それでも店前に歩道より3段高いボードウォークを擁したアチラのショッピングモール風の構えで、Buのような店にはふさわしい外観だろう。ココの6分の1がBu(ブー)。店内は想像していたより数倍狭い。壁・天井の白に床・テーブルのダークブラウン。シンプルなツートーン。サーフボードなど、要所に南加テイストを配置。プロジェクターが白壁"直"に映していたのは――『ビッグ・ウェンズデー』。
狭い店内を抜けてテラスに出ると、そこは地上3m、空中に張り出した物干し台の様な造り。左右を窺がうと他店もそれぞれに小じんまりとした"マイ・テラス"を張り出している。足元はニュータウンによく見られる、立体交差して車道の下を抜ける遊歩道。近所の子供たちの遊び声が賑わしい、生活感溢れる南カリフォルニアの休日――。BGMは店内から微かに漏れ聴こえてくる程度だったが、ジェイムス・テイラーの「きみの友だち」は確実に流れていた。あとビー・ジーズ「ステイン・アライヴ」、ワイルドチェリー、スイートの「フォックス・オン・ザ・ラン(←ややレア)」など。
キッチンからはパティをこねる音が聞こえてくる――いや"叩く音"と言った方がよいかも知れない。普段よく聞くペタペタ……という小刻みなリズムではなくて、パチッ! パチッ! という感じの高域の効いた音で、一回一回に力を込めている感じが伝わってくる。こんな音は今までに聞いたことがない。
チーズ・バーガー¥1,100。カラフルな皿のデザインが効果絶大! 白ゴマのバンズは裏マスタード、レッドチェダー×2、パティ、生オニオン、粒胡椒、トマト、フリルフリッフリのリーフレタス、マヨネーズ、下バン。「味付けは少量の塩と胡椒のみで、素材を味わうカリフォルニアスタイル」……しかし、つぶつぶ胡椒を中心とする塩味はそれでもけっこう押し気味のように思えた。150g粗引きパティはコリッコリした歯応えでワイルドこの上ない。夜はスペアリブが自慢の店、肉の"魅せ方"は相当に心得ている。
2枚重ねのチェダーチーズも威力を発揮――だからだろうか、やはり全体に塩が強めなので、ココに甘いケチャップをかければちょうど好いところに落ち着くのでは――と考えて、かけてみたところがビンゴ! 逞しいパティをしっかりしたバンズで挟んだバーガーは安定感抜群、ふんだんに振られた胡椒は"鋭利な"と言うより"骨太な"刺激。西岸の味は概して薄味であることを日本国内での経験で知ったが――説得力に欠けるなぁ……でもココもココもそうだったから――コノ店はそうでもなくて、なかなかにごっついバーガーを楽しませてくれる。
付け合わせはクリスフライ――クロス状にカットしたフライドポテト――ココで出て来たのはコレだ! あとパプリカやらカリフラワーやら入ったピクルスは盛り合わせ的お得感大! これにもペッパーひと振り。
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店名Buはマリブのブーだそうで、以前「L.A.S.T」で、南カリフォルニア料理ってナニ……? なんて話があったけど、なるほど"南"に対して何かしらのステータスというのは確かに在るワケですな? イイ〜波来る地点とか。サーフィンをテーマにしたお店はココにもあったけど、ホントはこんなロケーションに店構えられたら言うコトないんだろうネェ〜。少し手狭な気はした。きっと自身そう思っておられることだろう。
出来たらこの棟の2コマくらい("コマ"って展示会じゃないんだから)、ちょうどヤシの木の植わってる前辺りを2コマ奪って大きく構えたら、店のカラーにもハンバーガーのテイストにもぴったり合うように思う。さらに言えば店の前に駐車スペースがあって、ごっついアメ車がブゥーーン……と乗り付けて来たりして……イイでしょ? それこそ夢のカリフォルニアだね。
※'06年9月末をもって閉店してしまわれました。カリフォルニアの夢が……。(2006.11.15)
2006.1.19 Y.M