『フォレスト・ガンプ』を観た。今ごろ初めて観た。それでコノ店へ行ってみたくなった。「どんなバーガーか読めてしまう」なんて以前確かに言ってはいたが、それでも行ってみたくなった。
「1994年のアカデミー賞受賞映画『フォレスト・ガンプ』をテーマにしたアメリカン・シーフード・レストラン」で「主人公フォレストが友人ババの遺志を継ぎエビ漁業を成功させた後に、レストランをオープンすればこうなったであろう、という想定がコンセプト」のお店。
私は最初、映画にアイデアを得た日本人がやってる店とばかり思っていたので大して注目していなかったのだが、コレがとんだ見当違い。1996年、米加州モントレーに1号店をオープンし、現在全米15店、バリ島やフィリピンにまで店を広げるグローバルなレストランだった。舶来系の情報にはどうも疎くてイカン。
日本は大阪と東京。コノ店の売りのひとつに"Waterfront locations"というのがあり、殆どの店が海を臨む水際の立地に在るのだが、ババ・ガンプ・シュリンプ東京は、文京区は春日、LaQua1F。一応は温泉場ということで水際判定セーフ? 店の前にはウォーターシンフォニー(要は噴水)もあることだし。あるいはお台場辺りに開くべき店だったかも知れない。日本での経営はWDI。
映画に倣い(ならい)走って入店(←アホ)、一歩入ると……BGMはなんと! ステーシーQの「トゥー・オブ・ハーツ」。一応全米トップ3ヒットだけど('86.10.11 No.3)、しかし結果として彼女は限り無く一発屋さんであるから、もう二度と聴くこともなかろうと思っていたのが、まさかこんなトコロで20年ぶり(エーッ! もーソンナなんのぉ?!)に耳にしようとは! しかも聴いた瞬間すぐ曲名思い浮かぶ私……。
その後も着席のタイミングでロバート・パーマー「恋におぼれて('86.5.3 No.1)」のカッチョいいイントロが、続いてフォリナー「アイ・ウォナ・ノウ('85.2.2 No.1)」と80's が結構な大音量でかかる。
映画の余韻からまだ醒め切らぬうちに駆け込んだので「劇中のシーンをインテリア・モチーフに取り入れた」店のディテールに目を輝かせ、奪われ、細め、そしてメニューにババ・ブルーの写真を見たときには少し目を潤ませた。「エビ漁の漁師小屋の雰囲気で作られ」た店内のトタン屋根の天井の上を、時おりジェットコースター「サンダードルフィン」が通過する振動が響き、響いたかと思えば次の瞬間にはもう視界前方、東京ドームをバックに絶叫を撒き散らしながら疾走している。
卓上にはピンポンラケット型のドリンクメニュー、それとブリキのバケツ――中にHEINZ のトマトケチャップ(とタバスコ)とブラウンシュガー色のペーパータオルが大胆にも丸々1本突っ込んであり、豪快。店内数箇所のモニターではフォレストが一日中出突っ張りの熱演を。併設するショップには劇中の映像写真、衣装などとともに「Tシャツ、帽子、ぬいぐるみなどのオリジナル・グッズも販売しております」が、愛らしいシュリンプのキャラクター“シュリンプ・ルーイ”についてはウ〜ン……。
オールアメリカンハンバーガー¥1,386、追加トッピングのチーズ¥105。米国サイトでは「Sorry, no Shrimp on this classic!」と断っているくらいで、シュリンプバーガーではない。映画に感動してシュリンプレストランに行き、だのに一匹のエビも食べないという、そこまでの不条理はさすがに出来かねて、¥600のサイドシュリンプを併せて頼んだ。おともには劇中、幼なじみのジェニーちゃんが叫ぶセリフを名にしたスムージー、RUN FORREST RUN¥777を。
平らなブリキのプレートの上にはフォレストの地元の地方紙? "GREENBOW COUNTY DISPATCH"(グリーンボウ郡特報)が敷いてある。付け合せはフレンチフライにコールスロー、タテに割ったピクルスがゴロンと、そしてサウザンソー。バンズは裏がこんがり焼けているが、温かくはない。少しモサついてあまり良いバンズとは言えない。下はシュレッドレタス(例の食べにくいヤツ)、シュレッドレッドオニオン、真っ赤なトマト×2、チェダーチーズ、パティ、下バンズ(ヒール)。
実はパティが美味しい。至極適当な焼き加減、挽き加減、そして噛みしめると溢れ出す旨味――しかしバーガー全体をキリッと締めるものが不足していて、パティの美味しさがいま一つ活きてこない。もうひと味欲しい――その役目はサウザンソースではなかった。ケチャップをかけたところ、コレが正解。珍しくケチャップのよく合うバーガーだった(ココでも取り上げられているくらいで)。串に刺さったサイドシュリンプはまぁ取り立てて……。カクテルサラダで食べたいかな?
§ §
フォレスト・ガンプとババ・ブルーは軍隊に入隊したその日、バスの中で意気投合して、以来"豆と人参"のようにいつでも一緒だった。ベトナムでの配属も一緒、夜と言わず昼と言わず、雨と言わず晴れと言わず、フォレストはずっと隣でババからエビの話を聞かされ続けた。
無数の奇跡を事も無げに話すフォレストの口からは、ババの人となりについて、エビのこと以外そう詳しくは語られない。実際ババ本人が登場するシーンもごく僅かでしかない。しかし彼が戦死した後も、フォレストのモノローグはババとの約束であるエビ採り船の話を中心に進む。
独り海底のガラクタばかりさらえていたフォレストのもとにベトナムでの上官であったダン中尉が加わって、幸運と二人の努力のおかげで、ついに事業は12隻の"ジェニー号"を有するまでに成功する。
結局創始者であるババは、悔しくもコノ事業に実際に参加することは出来なかったのだが、しかし彼が描いた素晴らしいアイデアと情熱は、当初の予定通りババ・ガンプ・シュリンプ社として見事に実を結んだのである。
フォレストは親友との約束を何よりも優先させて、しかし力むこと無く・気負うこと無く、無欲恬淡、風にそよぐ柳のような素直な心で果たし、そして一財を成すまでに上り詰めた後も、生涯の友人とその家族のことを忘れることは決してなかった――そんなお話。
→ # Bubba Gump Shrimp Co. [後楽園] のシュリンプ ポー ボーイ
【シーフードバーガープロジェクト】 Bubba Gump Shrimp Co. [後楽園] のディキシー フィッシュサンドイッチ