2005年12月25日

# 103 7025 Franklin Ave. [五反田]



 103店目にしてついに登場! の屈指の名店は、当企画100店目を祝す候補の一つでもあったが、巡り合わせ悪く、これまでずっと有り付けずにきていた。

 「雑感」でも書いたように、初めて訪ねたときは売切れ御免で泣く泣く引き返した。次に徒歩0分に住む友人と連れ立って行けるよう日程を調整していたが結局合わずに流れた。それでもようやく都合が付いて五反田に向かった時があったが、しかし我が意に反して胃腸の調子がまるで思わしくなく、その不振の胃腸にウソを付いてまで食べることが、とてつもなくシンドイ作業に思われたので、店の前まで行きながらにしてこの日は自重して引き返した。そして今回、訪問三度目にしてようやく食べることができた。三顧の礼とはこのことだろうか。


 八つ山通りを品川方面に進み、ある交差点で立ち止まって、右に曲がれば目下ロングラン上演中のキャッツ・シアター、左に曲がればコノ店――というのがおよその位置関係。なので『キャッツ』観た後にフランクリンでお茶する――というのが黄金コースだろう。

 坂の上り口に在る。コノ坂道を上ると島津山。江戸期は仙台藩伊達家の下屋敷であったところを、明治に入ってから旧鹿児島藩主・島津公爵が邸宅として使用するようになり、その名が付いたそうである。今は清泉女子大学のキャンパスになっており、一帯は都内でも有数の高級住宅地として知られる。

 その邸宅街の入口に全く同じ外観の建物が2軒隣合って並んでいる。何処かの国の大使館官舎として建てられたものを使っているそうなのだが、その向かって右の家がフランクリン、左は「ヌキテパ」という、これまた有名なフレンチレストランで、実は両店は庭でつながっている。7025...という意味深な店名は何処か外国の住所だろうか。クラプトンの『461オーシャン・ブールバード』みたいなモノなのだと思う。

 店内……と言うか邸内は、1階リビングをそれはそれは広々と贅沢にとった間取りで、お店と言うより桁外れに金持ちな知人の家に招かれたような感覚で、どこか家庭的なくつろぎを感じる。有名な中庭に向いた一面は全面ガラス窓になっていて、この中庭から入る白くやわらかな光の中、庭を眺めつ、暖かな部屋で食事をするのは誠に誠に心地好い。季節が良ければ庭にテーブルを出してオープンエアで食事もするのだろうが、でも庭で食べるより、開け放った窓越しに、室内から庭を眺めて食べる方が多分気持ち良いと見た。

 その中庭はこの冬の時期にあってもきちんと手入れがされているようで、さっぱりと気持ちの良い眺めである。季節になればきっと折々の花が美しく咲き誇るに違いない。奥に見える大谷石の石塀が年代を感じさせる。私的にはこういう庭先をネコが一匹、何食わぬ顔でヒョイと横切ったりすると、もう一発KOである。ちなみにこの界隈けっこうネコが多い。キャッツ・シアターの立地もその辺りを勘案してのことだろうか……

 室内に目を戻し、壁に設えた暖炉――てっきりただの飾りモノと思っていたら、よく見るとチロチロと火が入っている。現役で使っているとは素敵! まさか石炭ではあるまいから、ガスだろうか。一段下がったオープンキッチンの周りには鉄板焼きのソレを想起させるカウンター席がぐるりと半周。庭に向いて座っている恰好だったのでキッチンの様子はそんなによくは見なかったが、火の上に何本も鉄棒を並べた一角でパティが絶えずイイ音を立てながら焼かれていて、時おり庭に向いた窓ガラスに炎が上がるのが赤く映る。

 チーズバーガーLarge 149gで¥1,150、パティの大きさによりMedium 112gとEx. 225gから選べる(値段は失念)。びっくりするくらい一部の隙も無いバーガーである。すべてはひとつ目標を達するためにある――というような鉄壁のまとまり方で、その目標に対してソッポ向いている食材がひとつとしてない。無駄なモノが一切ない。

 まず白ゴマの乗ったドーム型バンズ。裏面がカリッと焼いてあるが、しかし必要以上にこのクリスプな食感に注意が行かないようにしてあるのか、焼き過ぎず、「カリカリッ」ではなくカリッ下にピクルス1枚、キレイなトマト1枚、天使の輪のような生オニオン、マヨソース、レタス、謎の特製ソース、チェダーチーズ、パティ、下バンズ。鍵はレタス

 コノ店の料理長によるハンバーガーの作り方が某業界誌に載っていたのを立ち読みしたことがある。それによると、レタスは適当な大きさに切った後、冷蔵庫に20分ほど入れておくと水分が適度に飛んでパリパリとした小気味好い食感になるのだそうであるが、実際に口にしたレタスはまさにその説明どおりの軽快さで、しかも恐ろしいほどコンパクトにまとまっていて食べやすい。オニオンの辛みも程好く、トマトもさっぱり爽やか。

 そしてパティ――コレはもう本当に焼き方命! 丁寧に、丹念に、繊細に、そして絶妙に火を通してあって、焦げ目にすら深い滋味が感じられる。ひと口ひと口、舌の上で転がしながらじ〜っくりと味わうべき肉であるが、しかし我が欲求は止まる所を知らず、あまりの美味しさに次から次へと口に運んで、149gパティのハンバーガーは瞬く間に目の前の皿の上から失せてしまった。

 謎のソースはよくハンバーグステーキにかかっているような種類に近いだろうか。刺激的でも自己主張の強いモノでもなく、肉の傍にあってひたすらに味を引き立てる役回り。これがとてつもなく美味しい。上下バンズはまるで吸い付くようにピタッと中身にフィットして、崩れない。下バンズがブヨブヨにフヤケないのはレタスの水分を飛ばした効果だろうか。

 付け合せはクレソンが一添えだけ。邪魔なポテトが付いていないのを見たとき、内心ガッツポーズをしたものだ(デリバリーでは全品にフレンチフライとオニオンリングが付く)。バーガー13品、サンドウィッチ15品。確かに本式のサンドウィッチを扱うお店の繊細さと心配りに満ちたバーガーであるように思われた。ある種欧風なワケである。

 クリスマス飾りも家庭的(非商売的)で素敵だった。ところがBGMがおかしくって、この落ち着き澄ました雰囲気の中にあって、ハードロックなギターによる、つまりはジミヘンの「星条旗」みたいなノリのクリスマスソング集が、小さくはあったが確かにギュイーンと鳴っていた。どこかで聴き覚えのある音だったな……。その辺も含め、ただ品良くかしこまってるだけの店じゃないゾ! という心意気が端々に感じられて、さらに興味深く思えた。イイから黙って食べに行きなさい! ――というレベルのお店。

# 7025 Franklin Ave. [五反田] のオー・ソレ・ミオ(再食)
# 7025 Franklin Ave. [五反田] のテリヤキバーガー
# 7025 Franklin Ave. [五反田] のチリチーズバーガー
# Christmas'09 ◆ vol.5 7025 Franklin Ave. [五反田] のターキーバーガー
# 7025 Franklin Ave. [五反田] のゴールデンブラウンオニオンチーズバーガー
# 7025 Franklin Ave. [五反田] のオー・ソレ・ミオ
# 7025 Franklin Ave. [五反田] のフランクスバーガー
# 7025 Franklin Ave. [五反田] のマッシュルームバーガー
# 103 7025 Franklin Ave. [五反田]

― shop data ―
所在地: 東京都品川区東五反田3-15-18
    JR・都営・東急 五反田駅東口より歩7分 地図
TEL: 03-3441-5028
オープン: 1990年9月25日
* 営業時間 *
月〜土・祝: 11:00〜21:00(LO)
日 曜: 11:00〜16:00(LO)
定休日: 無休(要確認)


2005.12.25 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 11:29 | TrackBack(0) | 東京編◆東部 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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