2005年12月01日

# 101 東京全日空ホテル チャコールキッチン 炙 [溜池山王]



 ココの店の宣伝が気になっていたのである。なにせ炭火焼の専門店ですから。肉の専門店がつくるハンバーガーならきっと美味しいに違いない――とは毎度言ってますが。東京全日空ホテルの3Fにある店ながら「ホテル編」として括られる、ロビーのカフェラウンジとは切り分けて考えたく。パンも美味しいと定評あるホテルなので、新御三家……(以下略)。


 レストランばかりを集めたこの3Fは、比較的最近、どこも今風のシックなダイニングに改装されたようである。思っていたよりはるかに広い正三角形の店の内部は、床の高低や壁・仕切りなどを巧みに使って雰囲気の異なるいくつかの空間に構成されており、いずれもゆったりと席を配して、くつろいで食事ができるよう、行き届いた設計がされている。BGMは少し遠くで昼のホテルにふさわしい健康的洋楽有線。

 チャコールブラウンのシャツに黒のエプロン姿が好印象のスタッフに案内されたのは、店の中心に位置する周囲より2段ほど上がった円形のスペース。天井は六角錐に尖がったガラス屋根で、ブラインドの間から零れるやわらかな外光がやさしく食事を照らし出……と言いたいところだが、撮影えっらく難しかった〜! どうしても飛び気味になってしまうのと、当然のようにシアンが強く乗るのよネ……(以下略)。

 ランチメニュー炙オリジナルチーズバーガー¥1,550。バーガー250gとベーコンを入れたあっさり薄味のスープ。季節柄、おっ、銀杏か……と思ったら、入っていたのは黄色いミニトマトだったサラダ――これにはチーズ系のドレッシング。

 バーガーのプレートにはフレンチフライ、ケチャップ&マスタードが"升"を思わせる器に二段重ね。手で食べることを前提としていないのだろう、それが証拠にフィンガーボウルは出てこず、おしぼりも一枚きり。オープンフェイス。ちょっと細長なバンズは黒糖ロールのようなツヤのある濃い茶色の表面に白ゴマ。裏はドライに焼けているが、生地にはロールパンの弾力がある。

 プレート上に裏返っている上バンズ(crown)の上に白いレタス、熟れたトマト、コーニッション。下バンズ(heel)の側に香草チャービルはみ出すベーコン、とろけるチーズはエメンタールか、パティ、その下にドミグラス系のソース、下バンズ(heel)。

 さぁ〜て! ……持てない。まず大きい。そして熱いなによりひどく不安定。下バンズはパティ――正確にはハンバーグ――の重さに耐えかねて既にぺしゃんこに潰れていて持ち様がない。バンズが緩衝材の役を為さず、熱々の肉を素手で持つ感覚と変わらない……それは憚られる。

 それでも少しだけ持ち上げてみると、積載物がひどく不安定で危うくひっくり返しそうになるので慌ててまた皿に置く。どうしよう……と考える。また持つ。また置く。良い持ち方はないかとまた考える……なかなか離陸できない。どこか付け入る隙はないかと想像を働かせ、何度もバーガーの周りで両手を動かしてみたが無意味に空を切るばかりで、何の解決にもならない。あきらめて泣く泣く半分に切り(我が主義に反する)、これでどうにか……とその片方を手にしてみたが、熱い上、なおバランスが悪い。レタスが……トマトが……すぐに重力に従った。

 それでもどうにかカブり付くと――ほとばしる肉汁! 反射的に口を離す……帝国の再来?! とも一瞬思った。しかしこのバーガー、パンにハンバーグ(つなぎ使用、ナツメグの香り)だけ挟んで食べていると言って過言でない。レタスは存在する。トマトも居る。ベーコンも居るには居る。でも印象がない。ハンバーグ独りの印象が凄まじく強烈なのである。独擅場とはまさにこのこと。チャカ・カーンがあまりにスゴ過ぎて、本来目茶目茶上手い筈のルーファスのメンバー達の演奏が霞んでしまっているのと同じコトである。

 ただこのハンバーグ、厚く、熱く、網焼きのコゲがビターな香ばしさを放ってこそいるけれど、しかし「帝国」や「オークラ」ほどの驚嘆を覚えるまでではなかった。

 正直ハンバーガーではないと思った。まず手で持てない。プレートの上でしか成立しないハンバーガーなんて、果たしてそう呼べるのだろうか? そもそもの起こり手で持ちやすく工夫された、機能的な食べ物なのである。それが重過ぎて皿から持ち上げることも出来ないとは。極大化したあまり自重で身動きがとれなくなり、やがて衰亡していった20世紀の交響曲のようである。

 私は手で持ててこそバーガーだと思っている。片やプレートに乗って供されるハンバーガーには両脇にちゃんとナイフとフォークが用意されているのだから、ソレらを使って食せばよい……というのが流儀であり作法なのだろうけれど、でもにぎり飯を箸で割って食べるなんて――世も末だと思いません?

§ §

 肉の陰でまるで目立たない脇役陣――肉の下のデミグラスソース。こいつは単体でゆくとけっこうキュッとキツメな味がする。でも肉と出会うと道を譲る。肉の上でとろけるチーズ。これも味が弱い。レタスは単体で美味しい。トマトもソースとの絡みでにくい酸味を効かせる。がしかし、全部合わさると……。

 総合力こそハンバーガーの真髄だからコレ、正直ハンバーガーでないなと思った。でも肉単体で食べるとさほどでもないが、バーガーとして食べると味が賑やかになり、華ができて、ずっと美味しくなるようにも思えた。そうした意味ではこれはハンバーガーである

 エッ? 酷評……? イーヤ! 手で持てないという欠陥は根本問題としてさすがに見逃すわけには参らぬ。構造的欠陥である。あーでも!翼持ってても飛べない鳥だっていくらもいるワケですから、そこは広い心でもってひとつ認めてあげても……イーヤ! わしゃ認めんゾ!! まして飛べないだなんて――ココは全日空ホテル飛べないでどうする。

2005.12.1 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 21:34 | TrackBack(1) | 肉弾編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック

チャコールキッチン 炙 @ 六本木
Excerpt: ■チャコールキッチン 炙 (11:30〜14:00(L.O.) ディナー 17:00〜21:30(L.O.) 無休) ※東京都港区赤坂1-12-33 東京全日空ホテル3F ※最寄駅:..
Weblog: 美味けりゃいいでしょ?
Tracked: 2006-05-25 17:56