さていよいよ今回最後のお店と相成り……。
時刻は土曜・晩の7時半――必ず電話で確かめて……の案内のとおりに、真っ暗な店の前で電話をかけると、我が耳元で鳴る携帯の呼び出し音に呼応して、店の中からリーン……リーン……とベルの音が延々(営業時間は一応19:30頃〜とはなっている。でも「電話してネ」とも)。早過ぎたか……と、商店街をぶらりひと回りし、頃合を計って再度かけ直すと今度はつながった。「今からやります」と。返して曰く「今食べに行きます」――。
時刻は8時過ぎ――食べてる前後に5、6組は来たカナ? そのうち、中で食べたのは1組のみで、あとはすべて持ち帰りだった。どこで食べんだろ? 家まで持って帰って温めてかな? その辺が「習慣化している」と書いた所以。宇都宮のギョーザ状態。カウンター席のみ8席ばかりの小さなお店。そうね……のんべ横丁に無数にならぶ、間口の狭い飲み屋みたいなのを想像していただけたら。狭い店ながら、しかし食べたらすぐ出てって……という空気はない。「ビーフステーキ」¥1,900、「ハンバーグステーキ」¥900がそれを裏付けているだろうか。ハンバーガー以外にもこうした"焼肉系"洋食メニューがいくつか。
その肉焼き用鉄板は細いカウンターの先端部にあって、上に排気口、周囲を透明なガラス板(多分)で囲み、しかも低い位置にあるようで客から手元は見えない。どれくらいの大きさか判らないが、次から次に入る注文をすべてこの鉄板の上でこなしてゆく。焼くのは"お母さん"……と言うより、小料理屋をひとりで切り盛る女将の風格。もうひとり、娘と思われる女の子が手伝いしているが、鉄板前は飽くまで女将の定位置。カウンターの後ろの壁には白タイル、質素なこげ茶の食器棚。見渡しても特にこれといった飾りもない、ある種殺風景な店内。なので「国内でも古いハンバーガーショップ」の証拠となるような写真も記録も店内には何もなくて、かつ忙しく働く女将に声をかけるのも忍ばれて、結局確たることは判らなかった。
チーズバーガー¥370にコーラ¥240。カウンターの上には塩、コショウ、ケチャップ、マヨネーズなどが置かれているが、しかしこれらはお客さんが使うのではなく、女将が調理するためのもの。ハンバーガーは何故か(と言うか、明らかに場所の問題だろう)カウンターの上で、つまりお客さんの目の前で組み立てられる。焼かれたバンズの上にチーズ、パティ、トマト、レタス……と順に乗せ、塩コショウをサササッと振りかけ、マヨネーズとケチャップを塗って出来上がりと。「合理性を考えて、逆さに出されるのが特徴」とのフレコミどおり、今こうして写真で見返すと確かに上下逆さまである。上記組み立ての説明も順序逆さま。が……その場で言われない限りは気付かぬワナ。逆さ向いてるとは。夢にも。
なので上下反転のまま口に入れる。バンズ表面何もナシ、裏サクサク、たまねぎのシャキッ! と強力にシンクロ。アクセントは強烈だが、逆に肉の印象は薄かったやも。チーズとパティの間に振られた塩がエラクきつかったのは、やはり飲んだ後の味覚を想定してのことなのだろうか(営業時間は一応〜深夜2:00頃)。ピリッと締まったバーガー。後味に重たいところなく、さっぱり。食べたらおウチに帰ろかなーって味。BGM――はテレビ。そして鉄板の焼き音。
§ §
それにしても上下逆さまにするとなぜ合理的か、その意味がよく解らない。包みを開けると逆さに出て来て、そいつを持って口まで運ぶとちょうどてっぺん向く――という合理性? でも表になっていても、親指をいちばん上にして残り4本の指をバーガーの下に差し入れるか、親指を差し入れて残り4本でてっぺんを押さえるか程度の動作の違いであって、なにかそのために「空中で一度持ち替えねばならない」とか、「逆手になる」とか、特にそういう不具合も生じないわけである。
ひょっとしてソノ親指の向きを差して合理的と言ってるの? あるいはバーガーを包みの外側から持って食べる場合を考えた方が関係があるかな? 包みを開いて、その包みごとバーガーを持ち、口に運ぶ。この場合、開けたとき裏向いてた方が、確かに包みを開ける手間が少しだけ省けるかも。
2005.10.25 Y.M