2005年10月07日

# 093 VILLAGE VANGUARD DINER [阿佐ヶ谷]




 ヴィレッジヴァンガードと聞くと私の場合ジョン・コルトレーンが思い浮かぶ。

 本社は愛知県愛知郡長久手町。以下、先日掲示板に書き込み頂いたエケコ様の言葉を(勝手に)お借りすると"名古屋といえば、「味噌+カツ=味噌カツ」、「漫画+喫茶店=漫画喫茶」、「本屋+雑貨屋=ヴィレッジヴァンガード」などの未知の組み合わせで新しい市場を切り開くドッキング商法が有名だが……"という公式に例外なく則ったお店である(……らしい)。それにしても不思議な現象である。ヴィレッジヴァンガードは現在、全国に173の店舗を持っている。そういう規模の企業というのは普通、広くその名を知られているものである。特別その店に用や興味のない人でも名前だけは聞き及びがある――というレベルが全国チェーンの規模と知名度ではないかと考える。少なくともひと昔前まではそれが普通だった。ところがヴィレッジヴァンガードはそうではない。店は遍く全国に増え続けているのだが、しかしその名を誰でも知っているかと言えば……今やそんな時代である(――らしい)。イヤ正直私も、バーガー筋の情報としてその名を認知したまでであって、実際に街中でヴィレッジヴァンガードに遭遇したことは一度もないのである……。

 本業は小売業(「遊べる本屋」をキーワードに、書籍、SPICE(雑貨類)、ニューメディア(CD・DVD類)を複合的に陳列して販売する小売業)。ダイナーは、東京は阿佐ヶ谷が一店目(……の筈)、吉祥寺、続いて今春下北沢店が出来て現在3店舗。中央線阿佐ヶ谷駅の北口ロータリーからビックリするくらいすぐに在る、細路地の別世界。ガレッジ風、白塗りの天井屋根。椅子は古家具屋できっとバラバラに買い集めたのだろう、チューリップチェアやらシェルチェアやらがざっくばらんに。細長い店内、奥はやや広くなり、片側の壁伝いに座り心地の良いベンチ。照明は箇所々々にレフランプのスポットが光るだけでウンと暗め←撮影泣かせ……。板張りの床はずいぶん使い古しているように見えるが、壁は最近塗ったように見えた(けど、なにぶん暗がりなんでネ……)。客層は見事なくらいに若者ぞろい。みなさん好みに一癖も二癖もある中央線沿線住人たちなんだろうか。バーガー15品。中にはテックスメックスバーガー¥820やニューヨークバッファローバーガー¥820といった興味を引く名前のメニューも。チーズバーガー¥820。付け合せはフレンチフライと、そのヨコにややションボリとピクルス×2。お相手は冷たいメープルティー¥470。

 ツヤのあるバンズは表面何もナシ。皮の張りが強く、言うなればブリオッシュに近いか。中はよく伸びるゴーダチーズ、その下にピクルス――この味は残る。パティが来て、オニオン、タルタルソース、トマト、たんまりフリルレタス、フレンチマスタード、下バンズ。ソースはマヨネーズでなくてタルタルそもそもそれほど好きなソースではないのだが、コチラのは例の鼻につく"ひしゃげたニオイ"がなくて好印象。トマトがやや酸っぱめで異次元だったが、パティはコリッとした噛み応えキュッと締まった肉質でイイ仕事。控え目ながらも肉の主張をしっかりと忘れておらず、この地味な安定感は堪らない。フリルレタスは通常のレタスに比べ弾力に欠けるか。焼いていないバンズのしなっとした表皮の食感と重なると、跳躍する力にやや不足を覚えるが、その分「内」にイイ旨味を溜め込んでいるであろうバーガー。

 BGMは「ジョニー・B・グッド」みたいなロックンロールから、ニッキー・ホプキンスみたいな"強いタッチの"ピアノへと。いいアルバムだったー! ついつい欲しくなった。で帰りがけ、どうしても気になるもんで、癪だったがついにスタッフに聞くと、見せてくれたCDには"B. Bumble & The Stingers"と。ふぅ〜ん……知らないなぁ、最近の人たちかな……などと見当を付けつつ帰宅後調べてみると、ナント60年代英国のグループとわかった。ほぉ、ニッキー・ホプキンスも遠からじ――ですかな?

 もひとつ重要なおまけ――。

 オモテの細路地から2階に上がる木の階段――ココこそコノ店で最も注目すべき空間であることに帰り際、ハタと気付いたのである。擦り減って年季の入った(ように見える)木の階段――見上げると右手にはペンキの剥げかけた板壁。この壁が2階までずっと続いていて、辿ってゆくと真上にはキッチンが在る。キッチンには階段に向いて不思議な窓が付いていて……と言いつつどんな窓だったか思い出せないのだが、とにかく変わった開き方をするのである。で、季節柄その変わった窓は開け放たれていて、中からジュージュー肉を焼く活気ある音が間近によく聴こえて来る。バーガー作りながら昇降するお客さんにこんにちはー! ありがとうございましたー! ……なんと素敵な窓だろう! と言うワケでこの立体的な階段のスペースが、コノ店の特等席


2005.10.7 Y.M

posted by ハンバーガーストリート at 12:30 | TrackBack(0) | 東京編◆西部 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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