"夏休み"とくれば旅! まだ夏真っ盛りの頃、せめて気分だけでも"夏休み"を……と、ぶらり玄関口まで行ってみた。
去年出来た第2ターミナルビルはまだ真新しく、入るお店も錚々たる顔触れ……「赤坂璃宮」「ドンサバティーニ」そして何故か「新宿アカシア」も。
みやげ物売り場も豪華絢爛、煩悩直撃のスイーツ光線がキラキラと光り輝く。かつて憧れの乗り物だった時代のステイタスをいまだ根底に据えながら、現代のお出かけスポットたる必要条件を十分過ぎるほどに備えていて、強烈に魅力的である。ホント、このスイーツのラインナップはみやげ物の域を超えてるヨなぁ〜デパ地下同然。お使い物にするには勿体無過ぎる。
誰より買った本人が食べたい……なので欲望の向くまま"2時間後の自分"のために土産でも探そうかと、夕食済ませたそのイキオイでイソイソ売り場に乗り込んでみれば――既にシャッターの降りたる由……。閉まるの余りにも早過ぎ。
ターミナルビル5F、展望デッキへの出口ヨコに位置するアメリカンダイナー。さすが"ターミナル"にふさわしい店の造り――というのを今回こそ旨く説明してみようと思い、少なからず調べてはみたのだが、20世紀デザイン史を系統立てて、あるいは定義付けて教えてくれるような好ページに巡り会うことなく、試みは結局失敗に終わった。
目黒通りの住人に見せたら鼻で笑われるような拙文だが、それでも知り得た範囲でコノ店について書いてみると――ミッドセンチュリーと呼ぶであろう、ダイキャストや成型合板など工業製品を多用したインテリア。トーンの基調はアルミ色と明るい茶。極力"角"を排した丸いデザイン。白い柱も柱頭の部分(天井との接面)が喇叭状に広がり、緩やかな曲線を描いている。そしていかにも空港のラウンジにありそうなアームチェア……すべてが旅客機ないしは空港を意識しているように思える。
私が今回確かめたかったのは、こんな感じの、きっと当時"近未来的"と捉えられていたであろうデザインの数々は、実は旅客機や空港の先進的なデザインに由来するものなのではないか……ということだったのである。つまりアメリカン・モダンはそもそも空港から始まったと。しかし残念ながらそれを裏付けるものを見つけることは出来なかった。ただ当時、建築家・デザイナーが空港のデザインを手がける/任されるという例は少なくなかったようで、彼らの代表作に数えられるほどの傑作も在るには在るのだが、しかしこの場合それでは話が逆である。
とにかく――ミッドセンチュリーと呼ばれる前時代的近未来デザインは、かつて憧れの乗り物だった時代の記憶を多分に呼び覚ましつつ、世紀を超えてなお近未来的で在り続けている――という、その点だけは疑いないだろうと私は思う。
エラク長くなったが、そんなワケで、コノ店は"空港"に期待されるイメージを見事カタチに表現している。ところでコノ店の店名、「American Diner」まで含むらしいのだが、その一方で隣に座った家族連れはカツカレーを頼んでいたり……。カツカレーの出て来るアメリカンダイナーなぞ聞いたことが無い。まぁそこは展望レストランとして期待される役割も同時に果たしているということで……。BGM――洋楽ポップス有線がかなり大き目に。
チーズバーガー¥1,400。アイスティー¥650。バンズ……この大判焼きみたいな質感のバンズを見たら要注意。さっきまで冷凍庫で眠っていた可能性が高い。表面白ゴマ、裏バター、濃い味のチリソースがふんだんにかかり、チーズ、パティ、下バンズ。熟したトマト、シュレッドオニオン、シュレッドレタス、ピクルス×2、マヨネーズ――以上外付け。
パティもバンズ同様分厚い。肉質は硬過ぎず、粗くなく、されどやや迫力は無いか。チリソースの支配率がとにかく高く、コノ味ですべてが片付いてしまっている感じ。シュレッドしたレタスはサニーレタスか、ややサラダ風。挟んでバラバラ落ちないかと心配するも、予想に反して煩わしい事態には至らなかった。付け合せは赤、黄、緑、三色のトルティアチップス(←ド○タコスみたいなの)。やや湿気ってる感じがしたのは季節ゆえか。
屋上デッキからはダダっ広い飛行場と、その手前ほんの僅かな面積を使って運行するANA機の離着陸の様子を見ることが出来る。ちょうどこれからの季節、天高い秋晴れの日にでも日がな一日ジャンボ機の発着をぼ〜んやり眺め……なんて使い方が良いかも知れない。のんびりするには最適の展望デッキ。
§ §
で、ふとデッキ前方に目をやると、そこに見慣れたロゴマークを発見……あぁ! 「WeST PArK CaFE」がこんなトコにも店出してんだ。手広いねぇ〜。「WeST PArK CaFE スカイ ファウンテン」――しかもつい7月末に出来たばかり。スタンド風の店で、バーガーこそ置いていないがロールサンドなどテイクアウトメニューが中心。階下に通常の店舗もある……って違う店の話で〆るってぇのもどうかと。
2005.9.6 Y.M