78年元町で生れ愛され続けてきたアメリカンハウス――なんてあるんだけど、こんな店、元町にあったっけ……?
とは言え父母に連れられてよく元町に行っていたアノ頃、我が興味の対象は幼子にふさわしく「ファミリア」であり「喜久家」であり、当時まだ輸入食料品店でしか扱っていなかったミルキーウェイであったワケであり、目に入らない・留まらないのはある種当然、道理である。
なので元町商店街のどこかに確かに在ったのだろう。その地元の生え抜きがクイーンズスクエアに店を出したワケである――すばらしい! 大体、再開発などしてピッカピカの駅ビル・ショッピングセンターが建造され、7・8F辺りにレストラン街など出来たりすると、入る顔ぶれは毎度決まって「新宿○○」とか「銀座○○天」とか「とんかつ○○」とか、どの街行っても見た顔・知った顔――これぞセット販売の極み。そんな中、たとえ一店でも地元組の出店などあるのは、止め処ないマンネリズムの氾濫に一矢報いるかのようでちょっと気持ちよい。
クイーンズスクエア横浜[アット!]セカンドに入る店。店の手前がフードコートになっているのだが――またはフードコートの"奥に在る"とも――コノ一角、庭先に設えた野鳥のエサ場みたいな印象。小鳥一匹やっと止まれるくらいの"辛うじての"エサ台の上に、遠方よりお越しの渡り鳥ご一行を集めては乗せ集めては乗せ、それで一時の休息を与えてる気に"なっている"……そんなイイカゲンな空気が感じられて、全く良い気がしない。と言うか、私は到底使う気になれない。なのでその奥に構えるコノ店にも同様な印象を持っていたワケなのである――店員がメニューを持って来るまでは。
白と赤の店。ギトギト真っ赤なソファ、白壁一面サインボードにナンバープレート、そしてネオンだらけ。きわめてゴチャゴチャ。フードコートの印象も重なって、さらにゴチャゴチャ……。しかしその印象は店員がメニューを持って来て後、一変……。雑然として落ち着かぬ中、不意を突く礼儀正しい挨拶、丁寧な接客……やはりサービスこそ偉大ですな! ただそれだけのことですっかりイイ気分になってしまう単純さ。
にしても場所が場所、いわば観光地の最前線に押し出されているような店なので、きっと利用客も日々相当な数だろう。店内備品の消耗もちょっと奥まった立地の店とでは比較にならないくらい早いのかも知れない。それもあってか全体にややボロッとした箇所が目に付いて……あぁいや、6月10日から24時間営業になったのね? だからか……掃除する間もないワケで、それがゴチャゴチャの主因だろうか? BGM――70's&80'sヒッツが無節操のてんこ盛り。
アメリカンクラシックチーズバーガー¥980。「自家製でバンズを焼いています。100%ビーフを使用したパティをチャーブロイル(炭焼き)してジューシーに仕上げてあります」フカッとしたバンズは表面白ゴマ、皮にエラク糖分の甘味のあるバターロール系。バンズとしてはちょっと味が立ち過ぎているようにも思うが。
中身はマヨネーズ、チーズ、パティ、やや水気の多過ぎるトマト、単体で食べると辛いがしかし水分を豊かに含んだ生オニオン、フリルレタス、バターを塗った下バンズ(heel)。パティはモヤッとしてかなり地味。それ単体では塩味を持っているようだが、味の主導権はマヨソース+バンズの甘味であり、トマト+オニオンの水分と相俟って全体としても丸い甘味のある、食べやすい味に落ち着いている。個々にはさほどとは思わなかったが、コノ辺りがバーガー的マジックの妙か。
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皿に注目――手前に「GARLIC JO'S」、奥に「L.A.S.T」――隠れた位置に「AMERICAN HOUSE」がちゃんとあるのだが、コレ、株式会社アメリカンハウスの経営する3店共通の皿らしく。他に計9つの店名で展開するハマの生え抜きは、横浜市内に留まらず、汐留、お台場……そしてなんと! カリフォルニアにも進出しているとはホントの話。でもってグループ店の一つ、ワールドポーターズに入っている南カリフォルニア料理のL.A.S.Tも同様にアメリカンなバーガーを扱っているとわかり、普段ならグループ店は"省略"でとりあえず済ますところを、ついふらっと……。 (つづく)
2005.8.1 Y.M