2005年06月11日

# 069 ハニービー [神奈川・横須賀]


 ……これまで日本のバーガー発祥を称する店をいくつか巡ってきた。いずれが先か…は定かでないが、とにかくどの店にも共通して言えるのが米軍との関わりという一事である。

 泉麻人氏のコラムによれば(ページがなくなってしまった!)、六本木の「ハンバーガーイン」が最初に在った飯倉は、近くに駐留地があって…と確かそのようなことを書いていたように思う。仙台の「ほそや」も某記事に「仙台は軍都でもあった」「終戦後、軍関係の施設が置かれたことがある」とあり、日比谷の「ニューワールドサービス」はGHQに接収されたビルの中に在った。佐世保については最早言うまでなかろう。

 さてソノ佐世保の味を知ってしまった身としては「美味しいバーガーは基地のソバにアリ!」という単純な発想が湧いて湧いて仕方がない。それが安易なのか妥当なのか―コノ仮説の真否を確かめるべく、米軍キャンプの周辺を巡る企画を打ち立てたのがこのページ――題して"基地編"


ハニービー(honey bee)



 国道16号沿い、米海軍横須賀基地のゲート前、裏手はどぶ板通り――横須賀臭ふんぷんのロケーション。'68年オープン、この西暦は米軍的にはヴェトナム戦争のさ中、音楽的に言うと……フムフム、大変に興味深い年である。'68年。

 何て言うか……とにかく空気が古い。この古さは演出ではない。演出では成し得ない。ラーメン博物館やら何やらのような、昭和○年代風美術ではないのだ。本気で年を経ている。ジュークボックスが通信になろうと、スロットマシンがコンピュータになろうと、依然変わらぬ古臭〜いニオイの中で息している――そんな店。


 まるで焼き鳥屋か立飲み屋みたいな安い板壁で周囲を囲い、照明と言えば超ロングなカウンター席の頭上に微かに灯る電球の薄明かりと、カウンター内側のビールメーカー各社ロゴマークのネオンサイン、そして巨大メニューボードの蛍光灯の光以外ほか無い、薄暗ーい店内。それらすべての光源を圧するが如く、オモテの光が強烈に差し込んではきているのだが、しかしその光さえ、店の奥に到達するまでの僅かの間にググッと老け込んでゆくかのようである。褪せている。褪せた味わいが充満している。夜な夜な米兵が集まって来るらしい。1ドル100円換算でドル表示もある。人気メニューはタコス、チリドックetc.


 チリドックかぁ……他のメニューにグッと興味を惹かれつつ、それでもバーガー。6品(多分)の中からチーズバーガー¥400を。コースターを大きくしたような木皿にレースペーパーを敷いての登場は、店のイメージからすれば意外。実に端正な見た目だ。

 「地元のパン屋さんに特注」しているというバンズには特有のクサミがある。表面何もなし、やわらかい。中は千切りレタス、生オニオン、トマト、チーズ、パティ、バンズ(heel)。レタスとオニオンのサクサクが気持ちよい。マヨネーズ、ケチャップ、マスタードは卓上に。バーガーには一切調味料が加えられていない――やはりコレが真のアチラ流なのか。なのであっさりしている。が例によってそのままいただく。

 量は額相応に小ぶり(あるいは手ごろ)、米軍さんはコレ1個じゃ到底満足できまい。何と言うか……まとまった味とは思うのだが、ずいぶんと渋目のところで落ち着いている。なので所謂バーガー的イキオイには欠けるものがある。何かちょっと彩度が落ちているとでも言うか、そんな印象はコノ店の、そしてコノ街全体にも通じて言えることのように思う。

 カウンターの中はお母さん二人。BGM――地元のFM局の番組を流していた。高い天井から吊り下がるファンの回る音か、オモテに向けて付けられた換気扇の回る音か、あるいは冷蔵庫のサーモの音か、はたまた天井に取り付けられた巨大な空調の音か(多分コイツだ)――ガランとした店内を埋め尽くして、一種独特の虚無感を漂わせていた。心の隙間とリンクしそうな、そんなお店。


# ハニービー [神奈川・横須賀] のチリバーガー
# ハニービー [神奈川・横須賀] のクォーターネイビーバーガー

― shop data ―
所在地: 神奈川県横須賀市本町2-1
     京浜急行 汐入駅歩7分 地図
TEL: 046-825-9096
オープン: 1968年
営業時間: 11:00〜26:00
定休日: 無休(要確認)

2005.6.11 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 23:29 | TrackBack(1) | 横須賀編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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