2005年02月06日

# 034 NEW WORLD SERVICE [日比谷]



 戦後GHQに接収された日比谷・三信ビルに1948年創業。"NEW","WORLD","SERVICE"......一般名詞を3つ連ねた"非固有名詞的"な店名は、まるで星新一真鍋博コンビの描く近未来SFのような響きがして、たまらなく良いセンスである。古いのに古くない――進駐軍の将校たちが受けたであろうNEW WORLDのもてなしを、今も変わらず味わうことが出来る……そうした意味では、ひょっとするとコノ店は57年前に通ずるワープゾーンになっているかも知れない。


 茶色いタイル柄の床。茶色いビニール皮の椅子。お洒落なパターンが印象的な薄ベージュ色の壁。燭台を模した電灯が放つ茶色い光。ピアノ曲がほろほろと流れる、深く、落ち着き澄ました茶色い空間……まるで巨大な琥珀のカプセルの中に閉じ籠もってでもいるかのような、そんな錯覚を覚える。


 実はココもハンバーガー発祥の店と言われる店のひとつ――。チーズバーガー¥850、コーヒー付。頼むとほどなく厨房からペタペタいう音が聞こえてくる。ペタペタの後はジュー……。耳そばだてて待つうちに、まずコーヒーが運ばれる。締まった酸味のよく効いた、キリッと美味しいコーヒーだ。

 そしてチーズバーガー。白いオニオンだけが外にいて、こいつをトマトの上に乗せてバンズでフタをする。このオニオンがまるで計算したかのような絶妙な厚み。まず厨房で丸いオニオンをヨコに輪切りにし、次に客がソレをタテに噛み砕くと、タテヨコの比がぴったり理想的なサイの目が出来上がる。このサイの目の食感が気持ちよく、丁寧に焼かれた白いバンズと、ときに絶妙なシンクロを果たすのである。


 バンズは裏側にバター。オニオンの下にトマト、その下に青々としたレタス。レタスにはマヨネーズドレッシング。そしてパティ。このパティは"ハンバーグ"としてメニューに出ているソレそのままではないだろうか。中心がいちばん高く盛り上がっていてコロンとしている。ふわふわと柔らかい。"ぷりっとした"という形容が合うか。程好い塩味が肉の旨味を引き立てている。

 もっとオールドタイミーな(そんな英語ホントにあるのだろうか?)昔懐かしいモノが出て来ることを想像していただけに、コレは実に意外である。この柔らかさは"M"や"F"などを中心にむしろイマ好まれているものと変わりがない。


 チーズがよく伸びる。伸びるチーズというのは今までなかった。ピザと同じモッツァレラ辺りだろうか。そんなことも含め、このバーガーにはまったく古臭さがない。柔らかいパティ、美味しいコーヒー、そしてなによりこの店の空気――850円はお値打ち

§ §

 付け合せにフレンチフライ。昼は11時15分を回らないとバーガー(およびランチメニュー)にありつけない。いつ行っても家族的な温かいサービスで迎えてくれる。昭和の歴史的建築・三信ビルの見事な1階・吹抜のアーケードとともに、ぜひとも一度は訪ねたい前時代への時の隧道


※こちらもついに2007年の2月末か3月末に閉店。「もう戦後ではない」のでしょうか。レジームだかエレジーだか……

※店主からの「閉店のお知らせ」が上がっていました――こちらです。(2018.3.28)



2005.2.6 Y.M

posted by ハンバーガーストリート at 19:17 | TrackBack(0) | 帝都編◆都東 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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