早速↓カテゴリーがウソである。モスバーガーは後発組ではない。前回登場の"コノ国のバーガーチェーン草創期"の面々とほぼ時を同じくして誕生した。つまりはファーストシーズンからの古株なのである。
沿革を見てもらいたい。成増に実験店オープンが72年3月――私の記憶ではモスの名を聞くようになったのは80年代後半、「モスライスバーガー」で一躍脚光を浴び、なにやらマックとはひと味違うハンバーガー屋があるらしい……ということで柿生で市ヶ尾で(←全くの内輪)隠れて信仰利用する者が後を絶たなかった――てな感じではなかったかと。であるならばそれまでの15年、モスは一体どこで何をしていたのか? 沿革によれば87年12月「モスライスバーガー」新発売までの間(おぉ! 記憶は合ってる)、着実に店舗数は増え続けていたようだ。どうもココに答えが……。
50店舗目:コザ店オープン(沖縄)、100店舗目:小豆島店オープン(香川)、200店目:普天間店(沖縄)、300店目:福岡、400店目:山形、500店目:宇都宮鶴田店(栃木)、600店目:広島――で、700店目でようやく都内:南大塚店、さらに800店目:ヨコハマ宮元町店(神奈川)、900店目:関内北口店(神奈川)、1000店目:江古田旭丘店(東京)と首都圏が続く――。
これから察するに、首都圏展開はやはり私の記憶通り80年代も後半に入ってから、それまでは地方を中心に数を拡げ、都会で当たり前のようにモスが見られるようになったのはここ十年ほどのことではないかと。それにしてもいまだに新鮮な、どこか新しいイメージを持たれ続けている――というのは大変素晴らしいことである。
さてモスバーガー――前回のマック&フォロワーたちとは明らかに違う系統を打ち立てている。
まず見た目……マック系は包み紙に包んで出てくるが、モス(とFバーガー)はご存知の通りバスケットに入れ、ちょっと傾けて中身が見えるようにして出してくる――包み紙開けると湯気でちょっと湿った薄っぺらなバーガーが、頭のてっぺん見せてこちらにお辞儀――というのとは180度違う、見せ方の演出である。立体を感じる。見本の写真どおりの、肉と野菜が何層にも折り重なった食べ物であることを初めて実地に披露してみせたバーガーショップではなかろうか。
そしてこれまたお馴染み、注文を受けてからつくり始めるシステム――今となってはすっかり当たり前の話なのだが、マック全盛当時としては画期的なことであったように記憶する……ハンバーガー出来上がるまで待つ、否、待たされる……それ故に持ち帰り専用の"待ち席"が常設されているのも実は隠れた特徴のひとつか。
店の名前を品名にしたモスバーガー¥320はまたまたご存知厚切りトマトとミートソースがトレードマーク。ルーツになったバーガーがあるのだろうか……とにかく、モスと言えばコレ。歯ごたえのよい刻みオニオンの混ざったミートソースはスパイスがよく利いていて、正直この味だけでこのバーガー全体の個性を引っ張っていっているように思われる。胚芽入りのバンズが甘いかしょっぱいか……なんてコトはこの際まったく問題ではない。と言うかよく判らない。ソースこそすべて。それがモス。ちなみに「炭火アイスカフェラテ」S:¥250の、マイルドなコーヒー味との相性が抜群、のような気がする。
そして……ついに「匠味(チーズ)」¥670の胸を借りる。
店舗・数量限定(加えて時間帯も限定)。FKと違い、今度はちゃんと磁器の皿で出てきた。横に大きい。名刺大のカードが一枚添えられており、当日その店での製造番号と製造責任者の名前が記されている。裏面にはあれこれ説明書き。
パティはレギュラーバーガーの品質をさらに向上させた、もちもち弾力ある食感。特製バンズは顔を近寄せるだけで香ばしい香りが漂って来、脇役としての存在感を十二分に発揮している。オニオンは刻まずにソテー。味の決め手はやっぱりソース(説明書きには"たれ"とある)でしょう――しょう油ベースの特製ソースの(私にはやや辛い)味に、加えたブラックペッパーがトドメですな。この黒胡椒が調和のよくとれた味に立体感を持たせていると思う。全体としては倭人の好みを研究し尽くした、倭人のためのきわめて倭人好みな味作りだと思う――という感想は、このバーガーの正式名称がニッポンのバーガー 匠味(チーズ)であることを知る以前に思ったことだから、間違いない!
本場米国産にはない(であろう)、日本人らしいキメ細やかさが最大の魅力。しかし"細やか"に執着するあまり、ついつい小さくまとまり過ぎてしまう弊に陥ることなく、かえって香辛料やソースの使い方に一種豪放さを見せながら、その対立の上に絶妙な落としドコロを決めてみせる――それが¥670なら全くもっていいじゃないですか。国産礼賛の逸品。
§ §
そしてBGM――複数の店に行った結果、それぞれ違うモノがかかっていたのだが、いわゆるムードミュージック、イージーリスニング系を意識してるかなという選曲。最も気持ち良かったのは茅場町店……エアコンのよく効いた吹き抜けの高天井に、ハワイアン――ウクレレやスラック・キー・ギターが心地好く鳴り響いて、見事なリラグゼーション空間を体現していた。いやー快適!!
他の店で出会ったのは『真夜中のカーボーイ』などの映画音楽をはじめ「ジェットストリーム」辺りでかかりそうな曲とか。ポップナンバーをかけている店にしても落ち着きある雰囲気づくりは心がけているようで、ビートはあってもおとなしめな曲が多い。つまりモスではハッチャけた、活きのいいロックンロールなどまずかからない。どちらか言うと覇気のない曲メインで。
続・モスバーガー
発売開始から2ヶ月、ようやく最近匠味アボカド山葵を食べることができたので続編。まずは茅場町店の様子から。緑モスである。俗称ではなくモス自身そう名乗っているので、ぜひそう呼んで差し上げて――。
ニッポンのバーガー 匠味アボカド山葵¥880! テーブルサービスもグレードアップ。いつものように番号札置いてぼーっと座ってると、匠味アボカド山葵専用テーブルマットが敷かれ、その上にフォークとスプーン。そしてコレをお読みになってもうしばらくお待ちを……と、匠味では名刺大だった製造責任者カードがアボカド山葵では葉書大のお召しあがり方リーフレットにサイズアップして登場。"意気込み"ですナ。
「アボカド+わさび正油=マグロのトロ」――という方程式に、このバーガーは思ったほど頼り切ってはいない。山葵(わさび)は「山葵栽培発祥の地として知られる静岡の有東木(うとうぎ)産を中心に使用」「すりおろしてから数分で本来の風味が消えてしまうため、ご注文を受けてからセラミック製のおろし金ですりおろしてご提供……」なので「市販されている加工品の山葵とは違い、すっきりとした辛さとほんのりとした甘さが特徴で……」なるほど、確かに臭みやクドさのない、サッパリ山葵。色も(まだ酸化する前であろう)明るく鮮やかなライトグリーン――そういう意味では普段食べ慣れないモノを口にすることになる。その辺が吉と出るか凶と出るか……。
山葵ははじめからアボカドに塗られているワケではなくて「お好みでつけてお召し上がりいただく」よう、別添え。醤油ベースの特製ソースは抑え目で(たまたまかも知れないが)、全体として味加減は薄い。言い方を換えればフレッシュなアボカドとおろしたて山葵の、素材本来の風味やみずみずしさを楽しむバーガーかな? なのでトロットロした濃厚でマ〜イルドなモノを期待してると肩透かしなことになりましょう。
ただ「本物の山葵のすがすがしい芳香を堪能……」ということなら匠味用バンズの香ばしさは今回に関しては邪魔しているように感じられた。ちなみにオニオンは普通の匠味より量控え目。パティは相変わらず。「通常しゃぶしゃぶやステーキなどで使用されるウデ肉の部分のみを厳選使用……」な〜るほど! ホントにフワッフワなのヨ! だまされたと思って食べてみて。その辺の下手な洋食屋のハンバーグよりきっと500倍美味しいゾ! ――というワケで私はすっかり味の虜に……。このパティ食べられるだけで私は満足。よって私はベーシックな匠味チーズで十分。
ハワイのKではアボカドバーガーを「ツルツル滑って逃げ出すバーガー」と評したんだけど、このアボカド山葵は、食事中一度もそのようなことにはならなかった。不思議だ……アボカドの切り方まで研究しているとしか思えぬ。でもお召しあがり方リーフレットには「衣服などを汚さない様に……」とか、そんな注意書きが小さく書いてあったりするのだった。PL法でもあるまいに……とも思うのだが、ま、これも行き届いた心配りということで。匠味以下、すべて食器のままサーブされたため、食後、片付けようにもトレイがないことに気付く……オォッ! 客に意志があっても片付けられないメニュー、此処に誕生!!
§ §
余談――。
コノ文章、冒頭の緑モス=茅場町店で打ってたんだが、夕方6時ごろ来た客のうちの1人が匠味アボカド山葵を注文したところ、店員がこう応えていた――「申し訳ありません、本日アボカドの状態が悪くてお出し出来ないんですよ……」...GREAT!!
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