2006年10月28日

# 156 OX [学芸大学]



 カフェな雰囲気のハンバーガーショップ――と言えば、代々木公園のARMSはその代表格だろうか。この秋9月、同じくカフェな雰囲気を目指した居心地好いお店が学芸大学にオープンした。



 住所は目黒区鷹番――とくれば、東横線開通以来の住宅地。商店街から一歩入り込むと、古めかしく厳めしい面持ちの家々が重たく並んでいる。新しいものなどおよそ発信しないだろうこの古い住宅街の中に、この店は在る。駅歩5分。以前はイタリアンが入っていたマンション1Fを丸々使った広い店内。30余席、座り心地の好い赤い椅子とアイボリーのテーブルの組み合わせが並び、一番奥にはソファが壁幅いっぱいに配されている。壁を飾る白黒写真はこの店のデザイナーお気に入りの、サンタモニカのホテル。西海岸の明るく心地好い空間をイメージしたインテリアデザインは、どこかリゾートな、開放的な空気を生み出している。BGMにはブラック系が実に耳障り良く鳴っていたのだが、ふと見上げるとソニーのスピーカーだった――BOZEより断然好きかも。



 コノ店最大の注目――と言えば、自前で焼いているバンズ。国内にバーガーショップ数あれど「バンズを自給できている店」というのは恐らく幾つも無い筈である(つい先日の神戸屋レストランやホテルなどを除けば、佐世保のミサロッソぐらい?)。バンズはラーメンにおけるに相当すると言ってよい(もちろん値は違いますが)。麺は製麺所が作るのに同じく、バンズはパン屋がそれを請け負っている。窯などの設備の問題、それと同じくらい手間の問題が大きいだろう。コノ店の場合、オープンキッチンの中央にオーブンが設置されている。そう大きくはないので一度に焼けるバンズの数は20くらいだろうか――多くはない。オーブンの下には引き出しが何段も付いており、中には発酵中のパン生地が入っていて、発酵の様子を見て順次オーブンに入れてゆく……という作業を時間を計りながら延々と繰り返す。ひとつ計算を間違えるとバンズを切らしてしまうことになるのだから、これは大変だろう。焼き上がったバンズはツヤ消したような皮の感じが非常に食欲をソソる色合いで、生地は若干黄色みがかっていたか。割りとあっさりとして食べやすく、重くない。なかなかツボを得た一品である。



 次に特筆すべき――とくれば、メニュー。バーガー類30種、そのメニュー体系および数種のソースから選択させるところなどは、都内最高峰BROZERS'に息を呑むほどよく似ている。赤い唐辛子マークまで似ているのには流石にビックリ……。とは言え、BROZERS'そっくりのコピーバーガーが登場するワケではなく、結果的にまた違う味を目指しているようでもあり、参考にされるのは「王者の証し」と思って>BROZERS'、ここはひとつ……。ま、そんだけ注目されてるってことですな。非BROZERS'的メニューとしては、フォアグラを挟んだロッシーニバーガー\1,750やアスパラバーガー\1,100など――オックスの個性と発展はこれから。



 BROZERS'でもお馴染み――とくれば、パインチーズバーガー\1,150。バーベキューorトマトソースの二択はBBQを。直径は小ぶりな部類だが、高さが半端でない。上からスキュアでひと突き。ソースの垂れ具合といい、DEMODE DINERの背高のバーガーを思い出す。ソースを一方からのみ垂らすのが技術と演出。バンズはてっぺんのみ僅かにテカり、美味しそうな白ゴマが乗る。裏はサクッとコンガリ。中は一番上からソースが存分に滴り、モッツァレラチー、軽く鉄板の上に乗せたパイン、パティ、生オニ、これでもかというくらい分厚いトマ、ふんだんに畳み込んだレタ、下バン。BBQソースは案外甘め。それほどピリ辛くない。粗く挽いたパティはZIP ZAPを思い起こさせるミディアムレアな焼き加減でむしろステーキに近い味わい。香辛料の鋭い香りがよく効いて極めて強い牛肉の余韻を残す。但しレアな焼き方ゆえ温度が低く、アッツアツを口にする(かつ手に持つ)醍醐味には欠ける。レタスの畳みは良好、贅沢この上ないトマトの厚味とともにこのバーガーの下半分を構成するのはこれら新鮮野菜。但しこちらもバーガーに挟むにしては少し冷え過ぎているうえ(パティの温度も関係するか)、水気が多いため、袋の隅にずい分と汁を溜めることになる。パティだけ見ればかなり美味しいのだが、しかし下半分=野菜との連携が今ひとつで、今だと上は上、下は下にそれぞれを味わう二重構造に近く、BBQソースがぐるっと全体に回り込むようなトータルなバーガーの味わいにまでは辿り着いていないようだ。実際これだけソースをかけていながら、多過ぎる野菜がソースの味を薄めている部分もある。野菜で背の高さを出そうとするあまり、バランスが悪くなっているのだ。出来たらチーズとパインにもひと工夫を。パティの後味はとにかく素晴らしく、いつまでも肉らしい余韻が口中に続く。その余韻を程好いところでリセットさせるかのように、よく漬かったコーニッションとらっきょが後味キュッ!



 後日再訪すると、温度の低さをチーフ自身やはり問題視してトマトを軽くグリルしたうえ、挟む順番をパティの上に持って行く改良を加えていた。パティも前回より少し強めに焼いていたか。この日はトマトソースで食べたくて、トマトに一番合うバーガーを――と普段頼まぬアボカドチーズバーガー\1,200を選ぶと、何時間とかけて鍋で煮込んだ自家製トマトソースとチーズががっちり噛み合う安定感の中(王道デス)、ソースのライトな酸味がバーガー全体に行き渡ってサラダを食べている感覚にも似た爽やかさと、しかし一方では噛み心地がしっかり程好いパティの旨味に黒胡椒のピンとした刺激がよく効いて、肉・野菜それぞれの美味しさを楽しめる面白いバランスのバーガーを食べることができた。アボカドの存在もさることながら、やはりトマトの工夫が奏功しているだろう。コチラ……断然トマトソースがオススメ!(以上2006.11.6追記)



 気の合う仲間が集まって――居心地好い店内で気の向くままに寛いでいただけたらと、そんな店を目指してオモテ通りから入ったコノ静かな立地を選んだ。「ジワジワと浸透してゆけば」とはコックコートに袖を通すのは初めてという若きチーフの言葉だが(※今まで違うもの調理してたんです)、ぜひこの寛いだ空気をキープしながら「ハンバーガーのある暮らし」をじわじわ広めていっていただけたらと、「雰囲気」と「バーガー食普及」の両立を心より願う次第。流行るとごった返すし、難しいトコですが……。自家製バンズとステーキのように美味しいパティを武器にどんどん行きましょ!経営は……忘れてしまった。とにかく中堅外食企業が母体。


※2007年4月30日、早くも閉店。う〜ん……参りましたね。そんなに退き鉦早く鳴らされても……。


― shop data ―
所在地: 東京都目黒区鷹番3-18-7
      東急東横線 学芸大学駅歩5分 地図
TEL: 03-3716-2811
オープン: 2006年9月
営業時間: 11:00〜22:00(21:30LO)
定休日: 火曜日(要確認)


2006.10.28 Y.M

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2006年10月20日

# 155 R-Burger [六本木]



 「ラーメン店「尾道らーめん柿岡や」など飲食店を展開する太魯閣(品川区)は9月22日、六本木交差点の三菱東京UFJ銀行六本木支店隣に、ハンバーガーショップ「R-Burger(アールバーガー)」(港区六本木4、TEL 03-6805-3119)をオープンした」「今後5年間で100店舗まで拡大を目指す」――というニュースを見ておーっ!! と思った。'92年の「フレッシュネスバーガー」以来実に14年ぶりに「バーガー」と名の付くチェーン店が登場したのである。

 こういうときニュース記事というのは実に優秀である。知りたい情報を過不足無く、簡潔に伝えてくれる――私には到底無理! 上に引用した記事も、実際に店を訪ねて思った「コノ部分一体どうなってんだろ?」といった疑問に100%応えるパーフェクトな内容で、正直、ココに新たに長文をしたためる気など微塵も起こさせないほどの無欠さ(ま、あんちょこみたいなモンです)……と持ち上げるのはこの辺にしておこうか。最初に言っときます――この食べ物をハンバーガーと呼べる人はまず居ないと断言します(注意:別にお店に文句付けてるわけでも、恨みがあるわけでもありません)。

 コレは誰がどう頑張って食べても「肉まん」という食べ物に対する既成概念の域から抜け出せるものではない。「肉まんの白い皮を上下に2つに切り、間に豚肉を挟んだもの」――と表現するのが適確だろう。それを、である……「これまでのハンバーガーとの違いは「手作り」「食材」「食感」へのこだわり」「長年かけて完成させてきたオリジナルバンズはかつてない食感を実現……」って……。ゴメン、聞くまでもないことかも知れないけど、ソレ本気で書いた?

 いや、今言ってるのはお店がどうの……いう話ではないんですよ。言いたいのは、記事として最も伝えるべき重要な部分がすっかり抜け落ちているがために「コレ、絶対バーガーテング張りのジョークに決まってるヨ!」という解釈よりほかに受けとめようが無いという、この本気ともジョークともつかぬ記事に対するクレーム……いや、文句通り越して、もう殆ど嘆息ですな。

 実物を見た上でなら「肉まんの生地をバンズに見立て……」とか「流行りのバーガー風に肉まんをアレンジ……」とか書くでしょ、ゼッタイ。そうじゃないってこたぁ、つまりプレスリリースをそのまま載せてるワケですネ? 伝え手としての意思とか主張といったものはこの際どーでもよいのですネ? ……何だか「報道の在り方を問う」なんて方向に向かいそうだが、まぁいいや。この辺にしとかないと「オトナの事情の解らぬ世間知らず」と思われそうだから。

 とにかく――もしこれが広告ならば店の用意した資料そのままでも構わないけど、一応「新聞」とか「ニュース」とか銘打ってる以上ねぇ……。じゃあニュースと広告の違いは何なのよ……と問いたくもなりますて。

 六本木交差点に立てばすぐ分かる、白と赤の店。入ると正面にレジ、奥にキッチン。入り口脇にカウンター席4つ。階段を上って2階は31席。全席禁煙。椅子もテーブルも白。トレーは赤。床は木。BGMはとらえどころなくフツウに洋楽ch。

 バーガー類5品、ドッグ1品。大葉や甘酢漬け大根を添えた「Rバーガー」¥480、竹炭粉入りの黒バンズに酢豚風の具材をあわせた「黒酢バーガー」¥530、マグロのパテに醤油風味のあんとわさびマヨネーズで味付けした「まぐろわさびマヨネーズバーガー」¥650、「チキン梅バーガー」¥620、「アップル・バーベキューバーガー」¥600など。

 Rバーガーはポテトorライスペーパーで巻いたスティックサラダ+ドリンクのセットで¥780だったかな? 単品に「アイスウーロン茶」¥320を合わせると¥800。

 不必要なまでに立派なパックの中にちんまりと座すRバーガー。中華まん風、真っ白なオリジナルバンズはてっぺん絞りなしの丸型に"R"の文字。裏味噌、ポークパティ、薄切りの甘酢漬け大根、大葉、また味噌、下バン。ずい分小ぶり。

 八丁味噌をベースに甘めに仕立てた味噌ソースはくどからず、良い塩梅に効いており、何より大葉とよく合う。岩手産SPF(無菌)健康豚「岩中ポーク」を使ったパティは、脂分を豊富に含んで口どけが大変よろしく、ほわ〜んと美味。タマネギと竹の子が中に入り、時折コリッとした食感にヒットする。千枚漬のような形状の大根は食感にアクセントをもたらしてレタスの役割に近く、大葉の大葉以外何物でもない香りが全具材をまとめ上げて、最終的にはきっちりと収まりが着いている。

 トータルのバランスがよく計算されており、その点流石。黒酢バーガーは黒酢の甘酢あんを使っているが、しかし味噌も黒酢もキャラとしてはほぼ一緒で、さほど劇的な変化はない。ただどちらも使い方に節度があって、所謂ソース一発でゴリ押す力技でない点、なかなか。これから寒い季節に向け、あるいは重宝される……かどうか。

 そうね……こんな手の込んだ肉まんが高速のサービスエリア辺りでほっこり出て来ると、ちょっと嬉しいかな? ただ、大阪551蓬莱の豚まんが¥140、神楽坂五十番の肉まん¥315でしょ? で、この¥480は……。そんなワケで取材は思わぬ方向に向かい、今は神楽坂五十番の2Fで記事を打っている。ついでながら五十番の肉まん――本気で美味しいワ!

§ §

 拡大解釈というものは、そのものの呼び方が変わる"手前で"止めておくべきであろう。これを「バーガーのアレンジ」と理解することは、ヒジョーに難しい。そう考えると「LOCO-BURGER」などはバーガーの約束事の中で実にユニークな創意工夫を凝らしていて、あらためてそのセンスの良さを知らされる思い……ってヨソの記事の中で褒めるってのもナンですが。とにかくまぁコレはコレバーガーはバーガーって感じの住み分けで良いのではないでしょうか。

 展開する株式会社太魯閣(タロコ)はかっこして(品川区)と書いてあるけど、所在地「西中延」と聞いて、妙に親しみが湧いてきた。経営者は台湾人――まるでラッピのようだが、しかしハンバーガーへのアプローチがこうも違おうとは。

2006.10.20 Y.M

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2006年10月16日

# 154 神戸屋レストラン



 「パンとパンに合う料理を提供する店」と言えば、「アンデルセン」もさることながら、この神戸屋レストランを忘れることはできない。サイト中の「レストランへの道のり」というページに、パン食普及に向けたこれまでの取組みが記されている。

 1970年、万博への「空中ビュッフェ」出店を経て'75年「パン料理の本当のおいしさ、楽しさを味わっていただくため」、西宮に郊外型のベーカリーレストランをオープンさせた。

 '75年といえば日本の外食産業の黎明期……とまるで見てきたようなことを書くけれど、しかし私にはこの頃まだ確たる記憶はない。'70年7月「すかいらーく」1号店(東京国立)、'71年12月「ロイヤルホスト」(北九州黒崎)、'73年6月「アンナミラーズ」(東京青山)、'74年4月「デニーズ」(横浜上大岡)――と、主だつレストランの出店は70年代前半に集中している。デパート最上階の「お好み食堂」が近所にやって来た――というのが、ファミレスに対する当時の感覚だったそうなのだが(立川「BRIDGES」店主談)、私がよく覚えているのは、「家族で外食する」ということ自体が当時はひとつの贅沢だったということである。ファミレスすらキラキラと輝いて見えた――と言えば、共感していただける同世代のビュアーもきっと多数いらっしゃることだろう。

 とにかくある時期までのファミレスは、店舗もサービスの内容もエラクしっかりとしていた。この神戸屋レストランも、本場米国の様式を取り入れたかの様な大きな造りで、関東1号店である成城店('85年オープン)も、オレンジ色の瓦屋根に高い天井、大きくとった窓ガラスの外には緑が配され、ケヤキの巨木が周囲を囲んで、ゆとりと落ち着きを感じさせる。当時のキラキラとした輝きを今日なお持つ店である。但し成城学園前と京王線の仙川駅とを結ぶ、古くて細いバス通りギリギリに敷地が張り出す恰好ではあるのだが。

 入ると手前にパンとケーキの売り場。黒い目地が鮮やかなお馴染みの白いタイル壁がドーンと視界に飛び込み、独特の甘いパン生地の匂いが押し寄せる。奥がレストラン。オープンキッチンには無数のコック帽が忙しく揺れている。祝日のこの日、店内は午後2時を過ぎてなお家族連れで満員。さすがに場所柄がよろしくてか、どの席の子供も概ねよい子にしていた――ヨシヨシ。

 「ご家族でもより豊かなパン料理をお楽しみいただけるよう、時代や季節の変化にそった新しいメニューを開発し、ご提案しています」ということで、この9月より新たに加わったのがフレッシュビーフ100%のグルメハンバーガー¥1,260。

 チラとお聞きした話によれば、自分んトコで焼いたパンと定評あるハンバーグステーキを使い、ハンバーガー風に仕立ててみた――という程度の、割りと気軽な発想のもと生まれたメニューらしく、その気負いの無さと言うか、「皿の上のモノ全部積んじゃえ!」的な単純な動機が如何にもハンバーガーらしくて、かえって好きである。ちなみにバーガーに代わりレギュラー落ちしたのがカツサンドと言うから、カツサンド派からはさぞや恨みを買っていることだろう。付け合せはフレンチフライ少々にクレソンひと挿し。

 食パン神戸屋スペシャルの生地で作った大きめなバンズはふか系。ツヤのあるしっとり目の皮で、身は黄色く弾力があり甘目。裏にちょろとバター、アボカド×2の上からマヨネーズソース、チェダーチーズの上から弱い酸味を帯びた特製ソース、パティ、ベーコン、レタス、トマト、ヒール(下バンズ)。

 かなり大きなバンズながら、具材満載のためバランスとしてはむしろ足りないくらい。中でもパティが非常に大きい。神戸屋自慢のこのハンバーグノド越しよろしく柔らかく、2度挽きだけあり確かに食感良好。時おりキッチンから恐ろしく高速なパタパタ叩く音が聞こえてくる。しかし味としてはベーコンの方が勝っていて、どうしても注意はそちらに向いてしまう。とは言えこのベーコンも程好く抑えた塩加減の、旨味を感じられる逸品なのだが。

 フレッシュなレタスの美味しさも気持ち良く、個々にはどれも美味しく感じられるのだけれど、どうもハンバーガーとしての総合的な美味しさという点は、見た目ほどには追求されていないようだ。バンズのサイズはそのままに、もう少し中身を少なくした方がバランスは釣り合うだろう。今の比率だと食べる途中でバンズだけ先に無くなって、あとは肉と野菜――という感じに近い。

 水分量が多いバーガーでもあるため(ソースも豪快に掛けてあるし)、下バンも具材の重量を全く支え切れていない。それに折角の神戸屋自慢のパンの味や香りが、このバランスではむしろ相殺されてしまっており、「パンとパンに合う料理を……」という真価が今ひとつ発揮されていない。

 その点惜しまれるものの、しかし見た目どおりの非常に豪勢な一品なので満腹感は相当パック(袋)は供されず。しかし皿から持ち上がらない類のバーガーである。こんなときナイフ×フォークを使うと、折角のふっかりバンズをやおら潰してしまうことになるので、非常によろしくない。何か良い"手"はないものか……。

§ §

 神戸屋スペシャルの生地はイーストフード・乳化剤無添加と言うから、あの茨木くみ子先生もびっくり! それでいて、どうしてあんなにふっくらと焼き上がるのか……実に不思議で興味深い。

 パンをカゴに山盛り抱えたスタッフが店内を回っているのが気になる方は、手づくりパン¥210を頼めばお代わり自由! コノ店の醍醐味はやっぱりコレ! 関東・関西に20店舗、BGMは真に正統なるインストゥルメンタル。




【フィッシュバーガープロジェクト】 神戸屋レストランの真鱈のフィッシュフライサンドイッチ

2006.10.16 Y.M

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2006年10月12日

# 153 THIS IS THE BURGER [立川]



 またしても話は続く。今年5月、立川駅北口のバーガー店を訪ねた折、帰り際にマスターがこんなことを言うのである――「南口に立川バーガーがある」――なんと! 今年'06年の3月ごろ出来たらしいと。テイクアウト専門の店であると。では行ってみますか……と、私の胃袋はそこまで強靭ではないので(むしろ脆弱)、日をあらためることにしましたと。

 テイクアウト専門ということは、即ち店内でバーガーを撮り収めることが出来ないということである。と言うことは例の「店の外観をバックにバーガーマクロ」という、多分私しかやらないだろうあのショットを撮るためには、晴天でなければならない。間もなく長い梅雨に入ったので、明けるのを待った。明けた頃ふと思い立って、全国各地のバーガー店を訪ねて西へ北への旅をした。それをまとめるのに9月いっぱいを要した。やっと手が空いたのが10月――東京都内のバーガー店を取り上げるのは「ARMS」以来実に3ヶ月ぶりのことと。

 伊勢丹・高島屋を擁する北口に負けじとばかり、南口も現在再開発の槌音盛んで(と言っても駅前だけだが)、秋晴れの青空に聳え立つ巨大クレーンは、グランデュオの向かいに更なるショッピングビルの建設を任され、作りかけのペデストリアンデッキはその着地点として明らかにラーメン立川やに照準を合わせている。すずらん通りはそんな南口から斜め左方に入ってゆく人通りの多い路で、両脇には思い浮かぶ限りの外食チェーンというチェーンがズラリ(……やや大袈裟)――ま、そんな通りである。

 コノ店の左隣は例の一杯390円のラーメンチェーン、右隣は地元のお弁当屋さん、お向かいの店は、ひと頃景品のスリッパに針などが混入する類のミスばかり発していたドーナツ屋さん。和洋のファストフード店が端から端までとにかく続くコノすずらん通りの周辺には、駐車監視員(らしき人影)が何故だか異様に多い。そんなに取締りが厳しいのか……とユニフォームをよく見ると、蛍光チョッキにJRAのマーク――そう、すぐ先にウインズ立川が在るのである。彼らはその交通整理係と。ほほぉ……と一応は納得したものの、しかしこの一帯、ウインズからかなり遠ざかった、しかも住宅街の間の相当静かな路地までも彼らは隈なく配されているのである……必要なのか(必要なんだろうねぇ)。

 そんなすずらん通りの中ほどに店は在る。オモテの歩道上にベンチ、中は辛うじてイートインできる程度のカウンター席が左右の壁に6席ほど。入って正面がすぐカウンターで、その頭上にはバーガーの写真が6点ほど載ったメニューボードが裏から蛍光灯で照らされている。オープンキッチンというワケでもないのだろうが、キッチンは視界に収まるコンパクトな造り。そのすぐ奥にはこの建物の裏窓が、蔦の葉の緑に明るく縁取られて覗いている――ごく小さな店である。

 バーガー類7品。バーベキューソースの「アメリカンバーガー」¥680、「サルサバーガー」¥700、しょう油風味の「アボカドバーガー」¥680に「ステーキバーガー」¥780。デミグラスソースを使った「佐世保バーガー」¥780とそのラージサイズ、直径15cmのデカウマ!「立川バーガー」¥980。さらにチキンを挟んだ「サムライバーガー」¥580が最近加わったそうなのだが、しかしサムライなのにチキンて……(むしろ痛烈な皮肉か)。それぞれ+¥150でドリンクセット。さらに+¥100でドリンクLかポテト付TBセット。フライドポテト単品は¥200。

 ちょっと寂しいのは、まぁ仕方無いんだろうけど接客が至極型通りでしてネ。ハニカミながらでもいいから自分トコのメニューについて、もう少し熱心に語ってくれたら「う〜ん……もぉ1個買っちゃおうかな〜!」なぁんて思うのにネェ……。名代の立川バーガーはあまりに大き過ぎるので回避、内容同じでサイズを小さくしただけの佐世保バーガー¥780を、この日は珍しくコーラで。

 佐世保の場合――と言うか、「ヒカリ」のことを思い浮かべながら書いているのだが――こうした持ち帰り主体のお店の周辺には何処かしら食べられる場所があって、注文を受け取った人々は三々五々、適当な場所を見つけては思い思いに食べるというのがお決まりの光景としてあるのだけれど、コノ店の場合、周囲にそういう場所がまるで無い。オモテのベンチで食べるには人通りがあまりにうるさくて落ち着かないし、それ以上にカウンターに立つスタッフと面と向かう恰好になるので、ますます気まずい。その辺をウロウロしてみても腰を落ち着けられる広場や公園なども無いので、遠方よりお越しの旅烏諸君には、ぜひアツアツのうちに店内で召されることを強くオススメしておく。

 ロゴマーク入りのパックを開けると、てっぺんに薄っすら打ち粉の振られた平らなバンズ。表面何もナシ。白い生地で無味に近く、なかなか良いセンス――後口がさっぱり軽いところが良いのだ。名古屋の「ロコバーガー」といい、函館の「ラッキーピエロ」といい、ややドライ目で淡白な味のバンズが私の中で最近流行りつつある。中はぷるりんとしたマヨネーズ、レタス、トマト、玉子、シュレッドオニオン、ベーコン、デミソース、チーズ、薄身なパティ、ケチャップ、マスタード、下バン。パティには黒胡椒が振られ、プンと香りが良い。グシャッとした感じはある種佐世保的。味の基本は佐世保風に(あまり)焼かずに挟んだ肉厚のショルダーベーコン×2枚。クドからずハッキリとしたコノ味にデミグラスソースが絡んで、全体をうまくリードしている。

 但しそれ以外の具材についてはこの2強の陰にすっかり隠れて目立った活躍はない。佐世保と言えば、マヨネーズとケチャップを軸に全具材が力強く融合して、アノ独特の甘い味わいが引き出される――というのが私の印象なのだが、その点このバーガーはベーコンとデミソースの味にやや依存し過ぎていて、必ずしも"全体の"という構成にはなっていない。つまりベー&ソーの味で押し切ってしまっているバーガーであり、そう思うと、この単純な作りで¥780はややお高目かな……とも。とは言え、ひと口食べて単純に美味しいと思えるバーガーであることは断っておく。とにかくバンズの選び方が適切。

 これで直径15cmの立川バーガーは相当にキツかろう。カップルで分けるなどされることをオススメする。サイズのことを言うと、佐世保のバーガーは標準的なファストフードサイズのバンズの間に具材がコンパクトに詰め込まれた感じなので(もちろん「LOG KIT」の様に大きいのもあるだろうが)、よって"ヨコの大きさ"と言うより高密度と言う方が、佐世保バーガーを言い表すには適当なように思い。

 その点コノ店のレギュラーサイズは佐世保と呼ぶには大き過ぎる。しかもこんなに水分量の多いバーガーをほぼテイクアウトに限って売っているという辺り、そもそも無理がある。持ち歩くうちにどんどん水が出て、上下バンズはフニャフニャにふやけてしまうことだろう。それをまたどうして持ち帰り専門にしたのか。できたてのアツアツをその場で食べて欲しいと思うのが作り手として当然の人情だと思うのだが、そんなバーガーの醍醐味をバッサリ切り捨ててしまった時点で、何か常のソレとは微妙にズレているように感じるのだが……。とは言え、お店はなかなか繁盛しているそうなので、ま、気にするほどのことではないのかも知れません……失礼致しました。

§ §

 八王子にも在るが、立川が先。如何せんサイトが見つからず、詳細はどうにもこうにも謎のまま。同じく中央線沿線ということでは中野の「ZATS BURGER CAFE」など思い浮かぶのだが、果たして関係は有りや無しや……。単純明快なるバーガー的醍醐味に触れられそうで、しかしもう一つ見えてこない……微妙な立ち位置のお店ではある。

2006.10.12 Y.M
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2006年10月04日

# 152 LOCO-BURGER [名古屋・大須観音]



 大須は、東京で言えば浅草とアメ横と秋葉原をミックスしたような町だろうか。

 大須観音を中心に(と言っても界隈の最西端に位置するのだが)、いくつもの社寺が一帯に点在して在り、商店街のアーケードがそれらを縦横に結んでいる。土産物屋とか呉服屋とか洋品店とか玩具店とか珈琲店とか、それら古株の間々に若向きの服屋とか雑貨屋とかフィギュアを扱う店とかカフェとかが混ざり込んで、新旧綯(な)い交ぜ

 しかし若いパワーがボーンと全開炸裂しているでもなく、この歴史ある街並みの湿気の中にうまく――かどうかは分からぬが――抱合されていて、その空気から突出することはない。一部の通りにはやや錆びた趣きもあるが、しかしそういう筋の一つや二つ、浅草にだってあるだろうという程度。浅草と違うのは、バスを連ねて観光客がバンバンやって来るような町ではないところだ。もちろん土産物屋は盛んだが、しかし此処大須はそうしたヨソからの客に向けられた町でなく、あくまで地元名古屋っ子たちの拠り所といった感じが強い。

 それこそ縁日の出店がそのまま常設の店舗になったような居住まいである。なので歩きながら食べられる、"テイクアウト"と言うか、屋台的な食べ物が道の其処彼処でワンサカ売られている。たとえばソフトクリーム、大判焼き、クレープ、たこやき、ホットドッグ、そば焼き、コロッケ、揚げパン、甘栗、台湾名物屋台?(唐揚げデス)、ケバブ、シュハスコetc...国際色極めて豊か、ないしはヒジョーに怪しい、よく言えば極めてエキセントリックな(←しかし都合イイ言葉だね)テイストが色濃く漂っている。そうそう、横浜中華街みたいな裏路地もあるしネ。

 普通バーガー専門店というと、まだ少し奇異な存在に映ることが多いのだが、こんな縁日屋台の賑やかさの中にあっては、まるで違和感が無いどころか、むしろバーガーのルーツに極めて忠実な売り方をしている(1904年、セントルイス万博でのスタンド販売で有名になった)と言った方がより適確だろう。新旧&東西文化を幅広く受け入れるこの町の寛容さと下町ならではの人情深さ――そんな大須の空気が大好きで、店主夫妻は'04年4月、観音通りの一角に小さな店を出した。

 隣は串かつ屋、向かいの角はジューススタンド、そして道を挟んで富士浅間神社が真向かい。アーケードの商店街らしいスローな空気が溢れんばかりのシチュエーション。店の前に10席ばかり、種類バラバラの椅子机を並べて、そこでいただく――つまりこれは屋台である。

 ご主人は江戸で言うならチャッキチャキの職人さんで(尾張弁では何と言うのか)、「自分はただやるべきことを当り前にやっているだけ。持てるもの全てを注いで、それで美味しくないと言われたらそれまで」と、まさに竹を割ったような明快な想いでバーガー1つ1つに全身全霊を込めて作っておられる。

 「ずっと対面のサービスがしたかった」と言うご主人。見ていると、間断無く入る注文を片端からテキパキとこなす姿が実に気持ち良い。「当たり前のことをやっているだけ」とは言うのだが、しかしその当り前は世間一般からすれば随分手の掛かったもので、例えばパティについては部位を切り出すところから作業し、肉の状態を見てミンチの配合を自分で決めるといった、普通は肉屋がするようなところまで技能を得て自身でこなしてしまっているのだが、しかしそれはご主人に言わせれば全て「当り前」のことなのだから、つまり褒め様が無い。この人の場合、「褒め様が無い」というのが最高の褒め言葉かも知れない。



 最上級のステーキを片手に収まるスケールにぎゅっと贅沢に凝縮させて――というのがロコバーガー¥480のコンセプト。

 全ての具材が混然一体と混ざるタイプのバーガー、あるいは「パンの間にハンバーグを挟む」という基本ルールを押さえつつ、独自のアイデアを凝らした独創的なバーガーと言っても良い。他にマグロを使ったアヒカツバーガー¥480、チキンみそかつバーガー¥480、ゴルゴンゾーラチーズバーガー¥480、プレーンバーガー¥380。フライドポテト¥150、大粒のブラックタピオカ入りモミティーは¥350。値段は"大須価格"だそうで、「これ以上高いと売れねえよ!」というギリッギリの設定と……ココでもバーガー500円上限説は健在。

 カゴに深々と収まり、紙ナプキン代わりのポケットティッシュが添えられて来る。四角い扁平バンズはイタリアの食パンで有名なチャバタ生地。敢えて余分な味を除き、言わば「ごはんのような存在」を目指した。そのためか、途中どんなに個性的な具材の味に出会おうとも、食べ終わってみれば意外やさっぱりとしていて、まるで重くない。ちょっと粉を振り過ぎな気もするが、なかなかのアイデアものだ。

 中は名古屋風味の甘辛味の効いたキンピラにシュレッドオニオン、ベーコン、チーズ、トマト、ふわふわの玉子焼き状エッグ、ソース、パティ、レタス&キャベツは千切り状、下バン。味のリードはトマトソースに酸味をまろやかにするために赤ワインを加えたソース。甘酸っぱさが軽快なこのソースがグーッと全体に回り込んで、巧くまとめている。

 レタスの風味とキャベツの歯ごたえを活かしたフレッシュ野菜とチャバタ生地のバンズの食感がまず前面に立って、ややドライな感じのバーガーだが、感触絶妙なるパティと言い、玉子と言い、下味程度にほんのり効いたモッツァレラチーズと言い、トマトと言い、最後に余韻を残すキンピラのほの甘い味噌味と言い、細かな細かな味のバランスの上に成り立つバーガーで、「480円」という値段を考えれば相当に贅沢な一品だ。

 さらにこのロコバーガーにゴルゴンゾーラクリームチーズと焼きオニオン、ガーリックチップをトッピングしたロコスペシャルバーガー¥580があるが、こちらの方が味がグッと前に迫り出して来ると言うか、より立体的に感じられて、一段と美味しさが増している。鉄板の上でカリッカリに焼けたゴルゴンゾーラの""、そしてガーリックチップのアクセントが絶品! でも後口さっぱり!


 キーワードは「根っこ

 loco(ロコ)という言葉は「ローカル(local)=地元」という意味のハワイ語と英語の混成語で、ロコバーガーという店名には、ご夫婦ふたりが大好きな「ハワイの」という意味とともにもう一つ、「地元の」という意味も多分に込められているという。

 最近ご主人は、ふとしたきっかけから各地のイベントに呼ばれてバーガーを焼く機会が増えているそうなのだが、しかしそれも大須という「根っこ」があってこそやっていけることなのだと。厨房周りが狭く、ときに食材の貯蔵にすら場所欠く店ながら、でも野菜が無くなったと八百屋に言えば3分で持って来てくれる――そんな商店街ならではの融通と付き合いの良さが地元の頼もしさであり、また気安さでもあり、言うなれば商店街全体がロコバーガーの大きな台所の様な存在なワケなのであって、それほどまでに心強い「根っこ」をバックに持っていること自体、昨今なかなか無いことではないかと羨ましくすら思えるほどに、ロコバーガーは心底ロケーションに恵まれている。

 "大須"という町があって、そこに暮らす人がいて、そこに自分たちの店があって、そして奥さんが留守を守っていて……地元に深く根っこを生やした、世界に一店きりの個人店というものの持つ、意味合いの深さ、あるいはその"大切さ"、そして"素晴らしさ"といったものを、今回私なりに初めて理解できたような気がしている……ってまぁ、"気がしている"程度じゃあアカンのですが。

§ §

 さて、ムダ話もそろそろやめとかないと、職人肌の――て言うか職人なんですが――ご主人から「余計なこと言うんじゃねぇよ!」と、どやされるやも知れない(ご注意:実際のご主人はそんなオッカナイ方ではありません――脚色です)。てコトでここらで終わらせときますか。

 ……あぁ〜しっかし褒めるところのひとっつも無い店だなぁ〜!!


# LOCO-BURGER [名古屋・大須観音] のロコバーガー
# LOCO-BURGER [名古屋・大須観音] のスペシャルバーガー


― shop data ―
所在地: 愛知県名古屋市中区大須2-17-35
    地下鉄鶴舞線 大須観音駅歩5分 地図
TEL: 052-203-8161
オープン: 2004年4月29日
営業時間: 11:00〜20:00
定休日: 水曜日(要確認)

2006.10.4 Y.M
posted by ハンバーガーストリート at 12:46| Comment(2) | TrackBack(0) | 西国編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする