2005年09月29日

# 092 dining CAFE Indigo [外苑前]




 青山はさみしい街である。賑わいが集中しているのは表参道くらいなもので、あとは通りから一歩また一歩遠のくほどに街の気分が急速に減退してゆき、やがてただの住宅街に迷い込んで、あげく殺風景な千駄ヶ谷に出たり、墓地の脇に抜けたり、車ビュンビュンの六本木通りに行き当たったりするのである。青山は"街"と言うより"一帯"と呼ぶ方が正確だろう。太い幹線道や広大な敷地を有する墓地・公園・大学などによって土地が分断されて、ひどくまとまりがなくなってしまっている。

 元々がそれほど人の集まる場所ではなかったのかも知れない。その広大な"空き地"に造られた神社競技場霊園は、よく考えるとこれらすべてイベント事(催事)そのものである。そんなイベント施設の周辺に常時露店が軒を並べている――という程度の賑わいが青山の本当のところなのかも知れない。いやだからこそ、一本入った所にひっそりと隠れ家を構えるに足る条件が揃ってもいるのだろうけれど。とにかく――賑わいの上からきちんと蓋をしていなかったがために、どんなに飲んでも騒いでも熱くなってもすぐに冷めてしまう――学生の当時から、私は青山のそんなところがどうも好きになれなかった。

 休日の青山はことさらに人影少なく、外苑前で降りて小雨振る青山通りを急ぎ足に歩きながら、通りに面した店の構えをあらためて眺めると……本当に青山なのか? と疑いたくなるような泡沫な商売の店が多く……って失礼ながら。いやいや、青山の商売のメインはオモテでなく、やはりウラでしょ……と言ってもこの辺、裏手にはすぐ青山野球場があって奥行きなし。裏に入り込もうにも入り込む所がない。あわや腐蝕寸前の寂れた街並みを横目に「こんなところにホントにソンナ店があるのか……」と疑念を深めながら前進を続けていると、伊藤忠ビルの向かい辺りでようやく生活のニオイらしきモノが感じ取れるようになってきた。適当な角で曲がると無事目標の店を発見。ちょうど雨が強くなってきたところだったので、逃げ込むように中に入る。

 「インディゴ」という店名からは何か重たい印象を受けていたのだが、扉を開けると「都会に居ながらヴァカンス気分を!」をテーマにした店内は確かに南洋のリゾート風。裏路地に面して一応テラス(と言うか手すり)が設けられていて、オープンエアに。木製の引き窓がはまっている。入口の扉も木――この辺り決して安くはないだろう。リゾート気分を演出するデッキチェアに籐の椅子。床は幅の広〜い板張り。柱には藍色と濃い水色のタイルが美しく張られ、突き当たった壁の下にはやはり藍色のロングシートに藍色のダイニングチェア。キッチンを囲む壁には淡い水色のタイル(されどゴッツイ)が施されている。無論、熱帯系観葉植物も。東南エイジアンな香りとマリーナな雰囲気の中間をゆくブレンドの加減が妙に巧い。センスバリバリの尖がったカフェと言うより、ご近所の人が気軽にコーヒーを飲みに入るようなかつての喫茶店の役割を受け継ぐ新感覚イタリアン ダイニング(←ナゼ半角……)。

 Indigoバーガー¥1,200「国産牛肉100%!! 1日限定30食のみです」ぐるなびによると「一日限定20個!」……ハテ、どっち? 驚くほどすぐに出て来た。このバーガーがこんな短時間で仕上がるのか……久々に驚いた。付け合せはツナと豆類の入った凝ったサラダに、ちょいアンチョビ風味のフレンチフライ。お供にアイスの「カフェラテ」¥550。フカ系バンズ、表面白ゴマ。皮は非パリパリ、ウェットな食感がバーガー全体のキャラによく合っている。裏バター、ソテードオニ、久々に"ホンモノのパティ"、ベーコン、トマ、折りたたみ式レタスに見事な辛子色のマスタード、バンズ。パティは久々のホンモノここしばらく"ハンバーグ"が続いてたので、正直ホッとした。軽く振られた黒胡椒が時折ピリッと効果的。マスタードは辛さよりも酸味のアシストトマトから水分が適度に漏れ出し、バーガー全体に良い潤いを与えている。塩気のキツくない、バランスの良い丸い味のバーガー。BGMはジョディ・ワトリーの「ルッキン・フォー・ア・ニュー・ラヴ」、続いてロス・ロボスの「ラ・バンバ」……無難に80'sヒットチャート有線。


2005.9.29 Y.M

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2005年09月25日

# 091 渋谷バール集 [渋谷]




 何でも集グループというのがあって、都内要所に現在15店ほど店を出している。確か銀座で見かけたかな? 「炭火BAR 集」「炭火Restaurant&Bar 集」「Dining Cafe SHU」「Grill Wine 集」あとピッツェリアがあるのだが、このラインナップに今夏新たに加わったのが「バール集」。

 「南欧バ−ルさながらのカジュアル空間で楽しむ絶品の釜焼きピッツァと小皿料理タパスをワインと共に」てぇことで、店のテーマは「南欧」←しかし感慨深いものがあるネ! ついに南欧料理の店でもバーガー置くようになったかと!

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2005年09月24日

# 090 cafe fifty-fifty [吉祥寺]




 ところは吉祥寺。「ダイヤ街」という、いつ聞いても・何度聞いても変な響きのアーケード街にて――。とあるビルの"いかにも"吉祥寺"らしい"細い階段を上がった2F。明るいクリーム系の色調をメインにした、ポップながら落ち着きある、ゆったりしたカフェ。タテ長な店内、打ちっ放しの床の上にはすっきりモダンなダイニングチェアと明るい木目のテーブル。基本的にどの席も机を引っ付けて4人掛け仕様になってい(たように記憶す)るのが面白いところ。「どうぞお一人様でも遠慮なく、ゆったりとお使い下さい」ってトコでしょうか。

 確かに、如何に流行りのオシャレなカフェと言えども、隣との間隔狭く、窮々と押し込められてブロイラー状態……な店というのもこのご時世少なくないので(もちろん人気スポット吉祥寺然り)、その点"距離"や"居心地"に対する気遣いが非常によく図られているように窺がえて、好ましく思った。落ち着いたライティング。白く塗ったコンクリ壁に上向きにバウンスする壁の照明(コーブ照明とも違う模様)、天井からはレフランプが所々強い光を落とす席と、暗目のペンダントが垂れ下がる席とが半々。窓はあるがココも外はアーケードなので、煌々と差し込む光は陽光ではなく、蛍光灯。適度な混み様/空き様で、独り静かに勉強するのにも向きなゆったりした空間

 さて着席とほぼ同時にバングルスの「エジプシャン」が始まる。頭上にBOZEのスピーカーのある席を選んだので、タンバリンの音がシャリシャリとまぁよく響いて……。コノ曲と言うかバングルス、当時はえらく嫌いだった。しかし後年コノ曲を手がけたエンジニア、キース・コーエン氏に出会って以来、手のひらを返すように好きになってしまった、という「私的曰く付き」な一曲。ガールズロックバンドの非力な音色が彼のミックスによってパワフル……に成るべく、最大限の努力を試みたであろう、そんな痕跡の窺がえる曲――というワケでBGMはバングルスのベスト。スタッフも女の子多数、客層も女の子中心。そのちょっと女の子なテイストをバングルスがまた見事に表現しているように思った。己を知ってこそ出来る選曲の妙!

 チェダー&モッツァレラバーガーラージ¥820、レギュラーなら¥550。コノ辺りの設定も"女の子対応"か。付け合わせナシ。マスタードマヨネーズと刻んだピクルスが別に器に。「50/50」の印の入ったグラハムバンズ(いまだにアノ焼印の入れ方が解らない)。中身はソテードオニオン、薄いトマト、その下に約束のチーズ×2種、パティ、レタスが敷かれて、下バンズには粒マスタードが。さて食べると何処からともなく現われる、甘〜いフルーティーな味と食感……コレ実はタマネギなのである。いわゆる「キャラメル色になるまで」じーっくりと炒めたタマネギの放つコノ甘味は、いまだかつてどのバーガーでも経験しなかった新種の味覚グラハムバンズのちょっと野暮ったい食感に加わるパティ=ハンバーグのナツメグ味は正直好きではないが、しかし淡いモッツァレラの旨味タマネギの甘味とが立ち過ぎず・勝ち過ぎずの良いアクセントになっていて、実にイイ余韻を残す。どこを切ってもポップスウィートなバーガー。

 書き忘れたが、店内早くもハロウィンの飾り付けがされていて、メニューにもカボチャを使ったバーガー/スイーツが登場! この辺も吉祥寺らしい。帰りがけにカボチャを使ったクッキーを1枚もらった――やった! つくづく思うに"いかにもコノ街らしい"お店である。吉祥寺は若者の街だが、しかし同じ若い街=渋谷のようにはスレ切っておらず、若者らしい健全さ純心さを――要は若干の地方色と、そしてイモっぽさを――何処かに持った、そんな街なのである。そうした吉祥寺の若い空気と佇まいを凝縮させたようなところがコノ店にはあるように思えた。老舗カフェの多い場所柄、生き残ること自体、我々の想像をはるかに超える難しさがあるかも知れないが、しかしヨソとは違う、かつなかなかの面白味のあるカフェでイイ時間を送ることが出来て、余ハ満足デアル。そうそう、老舗のお歴々がカレーで売っているのに対抗してバーガーをブツケテきた辺り、バーガー支持者の一人としてエールを送るとともに、その趨勢を興味深く見守りたく……。


※2006年末閉店。カフェの街、喫茶店の街、そして何気にカレーの街……喰いこむことは難しかったですか(2007.7.7)


2005.9.24 Y.M

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2005年09月21日

# 089 J.J.MONKS [七里ヶ浜]



 9月に入ってもまだ収まりのつかぬこの夏の陽気・この陽射しの中、誘われるように南下、心は湘南の海へ――。タイムリーな話題としては江ノ電300形が本年9月を限りに引退……ではなく、304&354号車のみ74年間のお勤めを終えてラストラン。海上には白い帆影が無数、サーファー達もまだまだ夏モード!


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2005年09月09日

# 088 CHELSEA MARKET [秋葉原]



 四たび英国人シェフ、イアン・トーザー氏プロデュースの店――WeST PArK CaFE(手掛けたのは代々木上原店)、ROTIGRILL、そしてT.Y.HARBOR BREWERY――こんだけ行けば味も一緒でしょ……って当の私も少しは思っているのだけれど、しかしその立地の面白さと話題性から、ついまた行ってしまった……


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2005年09月06日

# 087 American Diner the Bay [羽田空港第2ビル]




 "夏休み"とくれば旅! まだ夏真っ盛りの頃、せめて気分だけでも"夏休み"を……と、ぶらり玄関口まで行ってみた。

 去年出来た第2ターミナルビルはまだ真新しく、入るお店も錚々たる顔触れ……「赤坂璃宮」「ドンサバティーニ」そして何故か「新宿アカシア」も。

 みやげ物売り場も豪華絢爛、煩悩直撃のスイーツ光線がキラキラと光り輝く。かつて憧れの乗り物だった時代のステイタスをいまだ根底に据えながら、現代のお出かけスポットたる必要条件を十分過ぎるほどに備えていて、強烈に魅力的である。ホント、このスイーツのラインナップはみやげ物の域を超えてるヨなぁ〜デパ地下同然お使い物にするには勿体無過ぎる。

 誰より買った本人が食べたい……なので欲望の向くまま"2時間後の自分"のために土産でも探そうかと、夕食済ませたそのイキオイでイソイソ売り場に乗り込んでみれば――既にシャッターの降りたる由……。閉まるの余りにも早過ぎ。

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posted by ハンバーガーストリート at 19:14 | TrackBack(0) | 東京編◆東部 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする